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「やっぱや〜めた!……って言ったら辞めれんの?」
今までの人生、気分で突き進んで来た。
「辞められる」
そんな自分が嫌いじゃなかった。
「ジョンも、メルトも、寿命だった」
分かってる。でも寂しいだろ?
雨沢の瞳も虚な悲しみが赤い湖を映している。
「でも、IOP消失で失われた関係も沢山ある。お前とメルトは……幸せだっただろう?」
今も、俺をこの場に連れてきたのはメルトの思い出だ。
「お前なら出来る」
「出来なかったこともある……」
それでも、メルトがいたから。
楽しむことが出来た。人生を。
「俺が……誰かの幸せを守ることが出来るって言うのか?」
「さあな」
「ぅオイ!」
けどきっと、こんな質問が浮かんでも、メルトもキョトンとした顔で俺を見るだけだろう。
——なんかわからないけど……リイヤ、楽しい?
そして笑うだろう。
——リイヤが楽しいなら僕も楽しい!!
HyLAに入ろうとしたのは思いつきでしかない。
「やってみっかな……」
やろうやろう!……楽しそうなメルトの顔が浮かぶ。
「失敗したって人生だよな」
「失敗の可能性は極めて低い。HyLAのテクノロジーはホーリーチェリーを撃破したわけだからな」
人類の災禍、ホーリーチェリーは消失した。
メルトは戻って来ない。
それでも。
俺は手を伸ばす。
ワクワクする方へ——……




