表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
光のほうへ……——終わらない夏
304/744

295

 思い出に背中押されて


 喪失に打ちのめされる——。


 モンテレイの乾いた風は哀しいけれど、心地良くもった。


 誰も知り合いの居ないこの土地で、俺はそれなりに頑張った。


 現地のチワワを見かけては、メルトとは全然違うと寂しさを覚えた。


 結局、同じ存在には二度と会えない。


 だから隣にいる運命になったなら、後悔しないようにいつくしむしかないんだ。


 いつ別れが来てもいいように。


「志願してくれた理由は?君は、ご両親と離れてまで、単身、メキシコに来た訳だろう?」


「相棒が嬉しい顔をすると思ったから……」


「相棒?」


 緋色ひいろのゴーグルを付けた怪しげな男……声は、……若い。おっさんにも学生にも見える。半ばヤケみたいに洗いざらい話す俺の個人的事情なんてどうでもいいだろと思いつつ、そいつは俺の話をさえぎらなかった。


「チワワの……ダークグレーのスムースチワワのメルトって言うんですけど。……俺が思いつきでやったこととか、失敗したら側にいてくれて、どんなにくだらないことでも、楽しそうにやってたら嬉しい顔をするんです」


 くだらなくはないか……。世界を救っている機関の人に向かって失言だったとヒヤっとしたけど、男はかえって面白そうに笑った。


「なるほどね、思いつきか……」


「違っ……!……いや……」


 違わない。


 どうでもいいとなんとかしたい。


 寂しさと思い出の狭間で、俺はHyLA(ハイラ)適合てきごう試験を受けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ