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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
光のほうへ……——終わらない夏
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「たかが犬だろう?」


 そんな風に言うやつらもいた。


 でも違う。


 メルトは特別な犬だ。


 俺が辛い日は尻をつけて寄り添ってくれて、楽しい日は笑顔で、元気が出るまで諦めずに遊びに誘ってくれる。


 俺たちはふたりでひとつのキュロス家の息子だったのに……


 ガキな俺は、犬の寿命を分かっていなかった。


 IOPが消失して、日本の栃木に、もっと大きなホーリーチェリーが出現した。


 ……これは俺への罰だと思った。


 眠れなくなったことも、胃に穴が空いたことも。


 でも、栃木のホーリーチェリーは消失した。


 生きていれば、体も回復する。


 それに、声が聞こえた。


 失った悲しみが辛ければ辛いほど、俺がメルトと居て幸せだったことが思い出される。


 メルトに愛されていたことも。


 記憶から、声や、笑顔が消えることは無い。


 ふと風が吹いたりする度に、笑顔で遊びに誘うメルトの姿が浮かぶ。


 楽しい思い出がふと甦る。


 辛いままでは居られないし、俺はこんな自分は好きじゃない。


 メルトは凹んでる俺を見て、つまんなそうな顔をするだろう。元気になれよと。


 体の一部を失ったような虚しさと、かけがえのない笑顔を思い出しながら中3の春、俺はメキシコのハイスクールに進路を決めた。


 メルトのルーツである場所を見てみたかった。


 結果、知人も友人もいないメキシコで、ドバイにいた頃よりチワワのことが詳しくなったということは別に無かった。


 それでも俺は、メルトが嬉しい顔をしてくれる俺でいたい。


 例え凹んでも、上手くいかなくても、風のように駆け抜ける俺の横に、メルトはずっといるはずだ。


 その姿が、虹の向こうに在っても。

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