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炒飯のお皿を洗って、
アタシは楓の優しいグレーの、ふわふわの背中を撫でた。
楓が居なかったら……。
アタシは、アタシたちは生きていけない。
「お姉ちゃん、これは猫じゃない?」
小さい頃の、シュウジの声が蘇る。
まだアタシをお姉ちゃんと呼んでいたシュウジの声。
昔の記憶。
シュウジの小さな手のひらの上には、
小さな獣のような……
消し炭のような、楓が居た。
「これが猫!?……嘘ッ」
幼いアタシは動揺していた。
生命とAIの混血。人類の悲嘆。
これは野生のArtificial Intelligence of distress、悲しみの人工知能……ではないだろうか。
「……猫って言うのはさ!この絵本みたいなさ、あっ」
消し炭の獣は、物凄い力でアタシたちの絵本を叩き落とした。
「シュウジ!噛まれるよ!!!」
「だ、大丈夫だよ!!!!!!」
「大丈夫だよ……」
弟は昔から誰からも好かれた。
「大丈夫だよ。ほら、ここのところに耳があるでしょ」
弟が指差した先に、くしゃくしゃの塊の小さな一部に、三角の小さなぴらぴらがピコピコと動いていた。
弟の小さな、短い手。
包まれた楓は、次第に落ち着いた。
「絵本に出てくる猫と同じ、可愛い猫だと思うよ」




