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不安なことがあると、嫌な記憶ばかり過ぎる。
ロボ菜ちゃんの傷ついた姿——。
悪意を受けて、痛かった記憶……
ぐったりしたサブローの身体……
下のお母さんの、帰らない笑顔…………。
いつだってアタシは何も出来なかった。
全部アタシのせいだ。出来たことがあったかもしれないのに……。
「……しー……、ほっしー!!!」
腕を掴まれた瞬間に、音が戻った。
「分かるよ。辛いよな」
警報が鳴っていたことを思い出す。
行こう、と促す玲鷗の手が震えている。
ジュンがアタシのリュックを黙って抱えている。
「きっと大丈夫だ。リディアなら」
玲鷗がそれをアタシに向かって言ったのか分からない。けど、そう言った後、玲鷗の震えは止まっていた。
すう、と息を吸い込んだ後はいつもの巨人のような笑顔。
「ここに居たら危ないみたいだ。避難しないか?」
「……ごめん」
玲鷗から目を逸らして、アタシはジュンに持たせてしまっていたリュックを受け取った。
頷いて歩き出した玲鷗の表情が見えない。見れない。
「一口喰ってからいくか?」
ジュンが玲鷗の背中を見つめながら呟く。
溶けかけのはちみつパフェ。それは冷たくて、少し温くて、甘いのかもしれない。
「……いい。……行こう」
いつもどうして、迷うんだろう。
それでも、玲鷗もジュンも何も言わない。
いっそ責めてくれたらいいのに、そういう二人では無い。
「リディアは勉強家だからなァ……」
ぽつりと玲鷗が言った。
今は縋るしか、無い……




