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「雨沢宗一郎。日本が最初に作ったブレイズレイダーの適合者だ」
シュウジと、母とアタシは声を失った。
雨沢宗一郎、宗ちゃんはアタシたちのアパートの下の階に住んでいる、学校に行っていれば高校一年生のはずのお兄ちゃんだ。
頭脳明晰、黒髪の王子のような容姿、宗ちゃんはシュウジ以上に何でもできた。
宗ちゃんのお父さんとお母さんも、苦労をしていたけどとても優しい人で、シュウジとアタシの好物しか作れない母の料理の腕を気遣って、栄養抜群の家庭料理を一緒に食べさせてくれたり、それに父のいないアタシたちにとって、宗ちゃんのお父さんとお母さんは、なんとなくもうひとつの両親(母は宗ちゃんの姉……?)みたいに思っていた。
ある日、宗ちゃんのお父さんの研究が世界的に認められて、宗ちゃんのお父さんは時の人となった。
世界の首都、大世界の人口島にラボを持つこともできて、日本トップの私立中学に受かったばかりの宗ちゃんを残して、宗ちゃんのお父さんとお母さんは世界の首都に引っ越して行った。
高校生になったら、首都で一緒に住もう。そう約束して。
それが三年前。
大世界の人口島の消失以降、宗ちゃんは下の階の家から出てこなくなってしまった。
アタシたちがどんなに呼んでも。




