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「あー!また二人でランチして!!」
キリキリと唇を噛む幸子が、今日はなんだかいつもより可愛く見えた。
「この後ロボ菜ちゃんも来るよ。っていうかジュンとはたまたま会っただけだし」
「そういう問題じゃなーい!!もー☆ドーナツ食べよっ☆☆☆」
憤慨しながらも、幸子はアタシたちの分もドーナツをオーダーしてくれた。
昼休み、アタシはマンハッタンのいくつかのカフェを順々に巡っていた。
一人の時も多いけど、なぜかジュンと良くカブるのだ。
「オタクの習性か……」
ぼそっとジュンが呟く。
そうかもしれない……こちらからはいろいろ見えるけど、人に見られない居心地の良いテラス。
インドア派なアタシは、無意識にそういう場所を探してしまう。
シンプルに、落ち着くのだ。
「まージュン氏もトモダチだけどさ……⭐︎ね、ミカ、いいね、ココ」
布ばりのテラスの屋根が雨音を弾いている。
「このままのんびりしたいね⭐︎」
「午後も授業だけどねー」
「もー!!!」
コーヒーとミルクの匂い。
甘いチョコドーナツ。
午後の授業が楽しみになってくる。
「っあ……——止んだ……——」
テラスに降る水のしずくの向こうに、淡い虹色。
「キレー……」
差し込む日の光が、カーテンのように揺れる……
声にならない希望が、この先もきっと。




