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「ミーカ☆ハイこれ」
アパートの階段の下で待ち伏せている美少女。
わくわくした瞳がキラキラに輝いている。
地下基地の中は快晴。
幸子の手のひらの中には、螺鈿のように輝く、貝殻みたいなものが握られていた。
「……綺麗」
朝日を反射する輝く貝を受け取ると、特別な気持ちになる。
「誕生日おめでとっミカ☆」
「えっアタシはまだだよ!?」
もうすぐアタシの誕生日だけど……。
それでもぐいぐい渡された貝殻はキラキラと輝いて、嬉しい気持ちになった。
「ミカは嫌かなぁって思って。恥ずかしーかなって。あんまり大掛かりにやるのはさ。それねー、私の好きな楽器なんだ☆ホラ、たまにニュースでやってるでしょ、彗星の欠片の加工品のこと。それね、彗星カスタネットってやつ」
「……知ってる……」
地球に降り注ぐ宇宙からの贈り物。
それをアクリルとか、プラスチックに混ぜて加工すると、こんな風に貝殻みたいに綺麗になる。
それに、学校の吹奏楽部がいくつか持っていたけれど、アタシも憧れていた。
「カスタネット、大好きなんだ☆無心に叩いても楽しいし、ただ叩くだけで楽しいんだよ☆」
「……アタシにも出来るのかな」
「もちろんだよ☆」
指を通す紐は、銀色の刺繍糸で丁寧に編まれていた。
「可愛い……」
不思議とそれはアタシの手のひらにぴったり合った。
「ね、ミカ」
「え、何?」
「6月生まれっていいよね。雨が優しくて薄っすら光ってて、綺麗で」
◯◯◯小5男子のひとりごと
(姉の誕生日、もうすぐだなぁ……)
(姉の場合、騒いでもなんだかんだノリを合わせてくれるけど、心を受け取ってくれるから)
(僕が好きなものをあげよう)
(いつもありがとう!……の)
「気持ちを込めて。」




