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「まずひとつ。ホーリーチェリーは今、他にありますか?」
「無い」
「確実ですか?」
「確実だ。AIdは各主要都市で管理されているし、観測されている。観測レーダーで感知できない箇所にいるのがディストレス、うち、動かないものがホーリチェリーだ」
アタシはため息をついた。
「……で、なんでアタシたちなんですか?」
「体組成のバランスが合致している。静電気を呼びやすい体質の人っているだろう?」
「アタシたちがそういう体質なんですか?」
「いや、そういったバランスが合致しているということだ。AIdは壊せないことを君たちも知っているね?」
そう、AIdは壊せない。復元してしまうはずだ。
「AIdは人工物だ。水と電気の膨大な力をぶつけることによって、復元不可能なレベルまで分解するエネルギーを放つことができるのがハイドロレイダーという仕組みだ。でも、生半可なエネルギーだと無理なんだ。大気中の水素を奪い、増幅させる必要がある。その依代となるのが君たちなんだ」
「人を乗せる意味は?対、AId用のAIdを作らない理由はなんですか」
「ハイドロレイダーは人工知能を一切排している」
「えっ」
そんな物質が、この時代、この世にあるのだろうか……
「作ったんだ。何年もかけてね」




