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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
六月のブルー……——灰色の雨
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篠坂しのさか君、映画なんて観るんだ?」


 IOP B区裏通り。


 映画なんて観ない。


 研究漬けの自分が唯一、気分を変えるために訪れる古い名画座。


 何度も上映されているタイムトラベルSFを覚える程に繰り返し観ているのは、自分なりの戯れに過ぎない。


「アタシもこの映画、好きなんだ」


 先日赴任(ふにん)してきたばかりで、使い古した白衣姿した見たことがないが、()()は特務機関で有名な三島みしま仁花にかと同じ声をしていた。


「館内でしゃべるのはいかがなものかと思うが」


「アラ、同僚なかまに冷たいわね。……アタシたちしかいないじゃない」


 平日朝一の映画館に人はまばらだ。


 でもない限り、自分はここには居ないだろう。


 三島みしま仁花にかはドレスアップをしていて、この後男とでも会うのだろう。

 鎖骨の間に輝く水色のネックレスが、幸せを物語っている。


「あー、このシーン、犬が可愛いのよね」


 こちらもどうせ戯れだ。


「あの犬は一匹じゃない。何匹かで一役をしてるんだ」


「嘘ッ」


「犬はかしこいが、長時間の撮影は負担がかかる」


「そうね……」


 いているのかいないのか、三島みしま仁花にかのいつもどこか隙のない瞳は、少女のようにスクリーンを見つめていた。


「あ、篠坂しのさか君、食べる?」


 思い出したように差し出されたポップコーンは甘苦い味がした。

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