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春の宵闇に、美しい薄桃色の蕾が浮かび上がっていた。
600メートルはあるだろうか、ホーリーチェリーの巨大な幹が、エリア栃木の一角に、天高くそびえている。
二週間のトレーニングで少しは慣れたけど、ハイドロレイダー射出、着地の衝撃に、アタシはぐっ、と声を漏らした。
現場までワープで移動じゃないのかよ……という疑問を聞きそびれるくらい、アタシは二週間のトレーニングを頑張った。
ホーリーチェリーのまわりには、青文字でHyLA、後ろに猫がひっかいたような銀の三本の爪痕……、うん、猫の爪痕だね、完全にアレ。その二つが組み合わされた特務機関のロゴが入った円盤が無数に飛び交い、闇夜のホーリーチェリーをライトアップしていた。
「ミカ君!シュウジ君!今日がダメでも明日があるからリラックスリラックス!二人の絆を見せてくれ!!」
「はい!」
コックピット内にサブローの激が飛ぶ。
……確かに、猿と違って木は動かない。
アタシたちは練習どおりに落ち着いて、アローを撃ってみればいいのだ。
なんて問屋が卸さない!
嫌な気配がしてアタシは叫んだ!
「避けて!!!!!あっ!」
「実華!?うわっ」
「高く飛んで下さい!早く!!!!!」
アタシは円盤に向けて叫び続けた。
手に痛みがある……
円盤をかばって咄嗟に出したレイダーの右手が、巨大なイノシシの牙に貫かれていた。




