216
スポットライトを浴びたエンパイアステートビルのてっぺんに、二匹の巨大な虎が激しく爪を交わしている。
一匹は美しい銀虎。
もう一匹は濃緑色のモンスター。
「みっちゃん!逃げるんだ!!!」
「でも!」
アタシは緑虎の動きから目が離せない!
無数のHyLAの円盤がニューヨークの空を埋め尽くし、まるで舞台みたいに明るくしているのだ……。
「行こうよ!ゴーグルおじさん!!」
幸子はライズブレスをワープシートに変えようとして……
「待つんだ!我々への指示は施設への避難だ!戻ろう!」
「でも!」
アタシは細い裏路地を見つめた……
さっきまでそこに居た、小さな少女の微笑みが嘘だったみたいに。
ビー!ビー!ビー!ビー!……——!!!
街全体から警告音が鳴る……
「避難して下さい!」
「外出者はシェルターへ!」
「避難してください!」
街のあらゆるところから、あらゆる人たちのホログラムモバイルで避難指示が鳴る……
「……——っ!!!」
エンパイアステートビルの緑虎が、銀虎を吹っ飛ばした!!
「セントラルパークの方だ!」
アタシたちは急いでHylabの教室に戻った。
街が傷ついている……
広大な緑の中に横たわる銀虎——
月を背にした獣の瞳は、真っ直ぐに前を見据えていた……




