212
HyLabの研究者は、ほとんどの人がHyLAのロゴが入った黒いレザーのライダースジャケットを羽織っているけれど、中は思い思いの格好をしていて、良い意味で個性的で、思いのほかアタシたちは注目されなかった。
というか、みんなモデルみたいにお洒落……。
研究者は周りにあまり興味を寄せないと幸子が言ってたけど、それぞれ、自分の世界が確立してるってことなのかもしれないけど、単に地味なアタシに興味が湧かないのかもしれないと思いながら、なんとなく負けた気持ちでテーブルに着く。
「どうした?」
「いや別に」
なんだか、どんな場所でも自分を変えないジュンすらもお洒落に思えてきて、少し取り残された気持ちになったけど、食べ慣れたわかめうどんのあったかい香りに少し元気になる。
——玲鷗とハワイの食堂にいるけど来る?
宗ちゃんからホログラム通信が入る。
——大丈夫、ジュンもいたから。
——OK.近いうちクラスの人と外行くのもいいよね。また今度!
アタシは淡々とわかめうどんを啜った。
お出汁の味が、ほっこり、美味しくて少し元気になった。
「なんか、暗い顔……」
「幸子……」
「もー!!!探したんだよ!!!」
ミルクティー色のツインテールを青空にヒュルンと靡かせて、幸子は空色のソファーの上にデン!と座り、アタシのテーブルに色とりどりのドーナツを置いた。




