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「姉!急に走り出すんだもんさ」
シュウジはサブローとアタシに、暖かいカップを差し出す。
「コーヒーもココアも冷めちゃったからさ、暖かいカフェラテ足して置いたよ。丁度半分こでいい感じになったからさ」
ココア混じりのカフェラテは、今の寒さを丁度良く癒して、頭が少しずつ、クリアになっていく。
「HyLabの分室には、君の境遇と同じ、HyLA-FirstからEighthの学生が入学予定だ。そういう選択肢もある」
もう、公立の制服は届いていたし、入学後の学校探検で一緒に回る友だちとも、約束していた。
それに初めて聞く場所に飛び込んでいくなんて怖い……
アタシはどこに踏み出す意思も固められないまま、夜の海を見つめた。
客船のイルミネーションを映して、切なげにきらきらに揺れている。
「まぁせっかくだし、最後まで今日を楽しもうよ!ほら。あっち、ストリート楽団が、綺麗な音楽やってる!!」
アコーディオンのノスタルジックな旋律が、友だちとの色々な思い出に重なっていく。
ゴンドラの上の弟の笑顔と寒そうなサブローの姿を見ていると、何も心配いらない気も、またしてくるのだ。
降ってくるフィナーレの花火を見ながら、アタシは願った。




