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アタシは必死に明るい方へ、明るい方へ走った。
冷たい夜風の中を……灯りを求めるように……
にゃんこランドシーの豪華客船を模したアトラクションの周りは、美しいイルミネーションと沢山の家族の笑い声や仲間同士が交わす微笑みに包まれていたけれど、アタシにはどこか遠い幻のように思えた。
アタシはこんなふうに、大切な人とこんな時間を過ごすことはもう無いのかもしれない……
「お姉ちゃん?泣いてるの?」
知らない家族の知らない子どもが、心配そうにアタシを見上げる。
「大丈夫……」
……関わってはいけない。
そういう思いで踵を返すと、見覚えのあるベージュのアロハにぶつかって、近くのベンチに座らせられる。
ジェットコースターに乗る子どもたちの歓声が、遠くで反響している……
「ミカ君……すまない……」
サブローが悪いわけじゃない。
それは分かってる。
けどアタシは何も言えずに、遠くを見つめた。
アタシの悲しみが落ちつくまで、サブローは何も言わなかったけど、アトラクションのメロディと、サブローのビーチサンダルのタップ音が微妙にズレてて、吹き出してしまったら、サブローは安心したように口笛を吹いた。
そのメロディーは、いやに綺麗だった。
「ミカ君、Hydro・light・academic・laboratory……HyLabのことは知っているかな」
アタシはまだ滲む夜の灯りをじっと見つめた。
「……いえ」
「HyLAの前身の国家特務機関が持っていた研究室でね……あらゆる学者が所属、ジュニアハイスクール、ハイスクール、ユニバーシティの卒業資格が取れてしまう、結構いい研究室なんだけどね。……その分室がさ、この春、入所対象生徒をレイダー搭乗者に拡大することになってね」




