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「まぁ、僕と姉の友だちなら快くやってくれるでしょうね!」
静かにホットココアを飲んでいた弟が、アストロ銃をピコピコと光らせた。
「わ!眩しっ!!!」
暗い海辺が急に眩しくなって、アタシは目を白黒させる。
「サブローさん、僕はHyLAを信じてますから、これからも友だちを増やしますよ!中学だって、部活の仲間と離れるの嫌だし、公立に行くつもりです」
「——っ!!!」
アタシは光を放つ弟を見つめる。アタシが選ぶことが出来ない選択肢を、いとも簡単に繰り出す弟を……
でも確かに、一縷の希望みたいな光が胸に灯って、ふいにショーコの笑顔を思い出した。
ショーコは不安なアタシを、何言ってんのさと笑うかもしれない……だけど……保証なんて無い……
「ありがとう!シュウジ君。……ミカ君ももちろん、公立に行ってもらって構わない」
「でも……」
関わったら危険が及ぶかもしれない相手……しかも、アタシなんかと、初めから分かっていて仲良くしたい人なんている?
「アタシ……」
「ミカ君?」
テラスの椅子から立ち上がったアタシを、サブローが心配そうに見ている……
風がやけに冷たくて、遠くに見える灯りが、急に手の届かない幻みたいに見える……
「向こうさんも……上手い手ですよ。ショーコや同級生に何かあったら、アタシ……搭乗れなくなりますから!」
「ミカ君!」
「実華!」
怒りみたいな悲しみみたいな不思議な感情が込み上げてきて……アタシは夜の海の街を駆け出していた……




