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海風の吹くテラスで、サブローはホットコーヒーをふぅ、と吹いた。
コーヒーの湯気が、潮の香りと一緒に夜風に混じって、肌寒くて、苦くて、やけに塩辛い。
「ミカ君の所為じゃない。そんな風に狙う方が陰湿な手口だと思う。……それに、我々HyLAは既に策を講じてもいる。君たちにまつわる関係者、……特に君たちと親しい人たちについては、24時間警護、居住の強化リフォーム、非常時避難支援システムの研修・導入を実施済みだ。安心してほしい」
「じゃあ、……もうショーコや小学校のみんなは……安全なんですね」
「そうだ」
でもそう言ったサブローの顔は寒さの所為かもしれないけれど、曇ったままだった。
「……よく、皆んな研修なんてやってくれましたね」
「ミカ君のこと好きだからじゃないかな。シュウジ君の友だちも、もちろんね。みんな驚きはしていたけど、快く受けてくれたと聞いているよ」
ふ、とサブローの顔が緩んだ。
でもアタシは、恐ろしい気持ちで一杯だった。
……本当に?
もうこれ以上、大切な人を失ったら、アタシは辛くて立ち上がれない。
それに、卒業のこのタイミングで、今はみんな快く協力してくれたかもしれないけど、……いつかみんな、関わってしまったことを疎ましく思う日が来るんじゃないだろうか……。
ショーコに嫌われたらアタシは……




