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全部が上手くいっている。
そういう風に、安心させてくるこの上司は、何かを抱えている……気がしていた。
遠くのエリアのジェットコースターの歓声が、幻のように響いて夜風に溶けていく。
テラスの前の海面に映る、静かな街灯の灯りと、遠くに見える豪華客船に灯された灯りが、夜はまだ肌寒い四月の風に浮かぶホットココアの湯気の後ろで揺らめいている。
「ってか寒くないの!?アロハ」
「……寒いよ、ハハっ」
ベージュの、ヤシ柄のサブローの結構お洒落なアロハシャツは薄手で寒そうだ。
……夏には良さそうだけど。
「サブローさん、僕のパーカー巻きますか?走り回ったら暑くなってきたから」
「ありがとう、シュウジ君。……大丈夫……大丈夫だ」
どう見ても大丈夫じゃないサブローは、ホットコーヒーを啜って震えた。
サブローは、いつだってアタシたちのことを考えている。そんな風に思っている。
けど、そんなサブローだから……嘘をつく。
搭乗者のために。
「良くないことが、あるんでしょう?」
ココアをじっと見つめる。
カップを揺らすとニャンティの形のマシュマロが浮かんで来て、可愛かった。
「……どうかな。でもそうだね。ミカ君にとってはたぶん、いい話じゃない。……君たちの存在を、世間に明かすことになったんだ」




