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「希望……愛……それは卒業ォー」
サブローがジャカジャカ奏でるウクレレは中々上手かったけど、赤いリボンのストローハット。ヤシ柄のベージュのアロハシャツに真っ白なハーフパンツ。ウクレレを弾きながら、無理やりに小脇に抱えたキラキラ輝く銀の薔薇の花束。何よりも歌詞!
ツッコミどころが多すぎて、アタシはご飯を食べる手を止めてしまっていた。
「風に吹かれてェー季節感じてェーそれは卒業ォーウォーウウォウイェーエーイ」
ふんわりし過ぎる歌詞に動揺して歌うのを止めようとしたのを、シュウジに姉、せっかくだから……と止められる。弟は大人だ。
仕方なくサブローのパフォーマンスが終わるまで、ご飯を食べてしまおう。うぅ……素敵なブランチが……曲調が一通り盛り上がり終焉を迎え、わー!とか言いながら拍手をしているシュウジは偉い。
やり切った顔でおもむろに差し出された花束を受け取る。
「卒業おめでとう!ミカ君!」
「あ……ありがとうございます……」
この薔薇は見たことないくらい綺麗だけども……。
「姉!今日はサブローさんが姉の卒業記念で、僕たちをニャンコランドシーに連れてってくれるんだって!ほら、姉ずっと行きたがってたじゃない。ホログラムメッセージ、見たでしょ?」
……見てない。




