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「実華さん」
小学4年生のシュウジはアタシをだいたいそう呼ぶ。
父がいなくなってからずっと。
「炒飯作ったけど、食べれば?」
弟はなんでも出来るヤツ。
対してアタシは普通の小6。
名前のようには、華は無かった。
「……漢字で呼ばないでよ」
「なんで分かったの?」
アタシは無視して弟の作った炒飯を食べる。
「姉様、母、今日遅いってさ」
シュウジはテレビを観ながら腹筋していた。
「バカじゃないの?」
鍛えたって、無駄なのに。
テレビの画面はビカビカと光っている。
バカな芸人がバカなことを言って。
弟は楽しそうに笑っている。
右上には今の時刻、18:18分。
右下には……
30日
小さく、そう浮かび上がっていた。
「楽しい?」
アタシの問いに、弟は笑って言った。
「うん」