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「ホーリーチェリーの開花予想は正しいんですか?」
「正しい。あれは悪さはするが、AIdだからね。各国の計測は一致しているし、間違いはない。ホーリーチェリーの打破について、いきなりだと大変だと思うから、訓練もしてもらいたい。な~に、簡単なことだ。筋トレ、イメトレ、射撃訓練を二週間ばかり」
「二週間で、間に合うんですか」
「大丈夫だ。しっかりと、訓練メニューを設けてある」
「……わかりました」
「ありがとう。ではこれに乗って。お母さんも」
サブローはA4サイズのきらきらした紙を畳に置いた。
これ、テレビでしか見たことのない、めちゃくちゃ高いワープ装置だ。
シュウジが紙の上で消えた。母も。
アタシは楓を抱いて、紙に乗った。
「えっ」
ワープしたはずのアタシは、六畳と四畳半の家の中に居た。
和紙が貼られたペンダントライトが、西日が当たったちゃぶ台を夕日色に灯していて、四畳半の部屋の奥には、アタシのトラ猫の目覚まし時計が置いてある。
窓の外はいつもの風景。
畳に置かれたA4の紙が光って、サブローが現れた。
「ここは特務機関の地下基地の中だ。周りはホログラム映像を映している」
木造風アパートは、安価だし再現が容易だ。
国家機関のAId管理ソリューションシステムが機能すれば造作もないことかもしれないけど、見慣れた環境にアタシはかなり、ほっとした。
「この擬似アパートを宿舎としてもらいたいと思う。明日の朝、迎えに来る。検査と対策のために、楓ちゃんは一晩預からせてもらいたい」
楓は自分からサブローのキャリーに入って行った。




