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「三島三朗だ」
うちのちゃぶ台に、サングラスの男が座っている。
和紙が貼られたペンダントライトが、西日の当たる部屋を夕日色に灯していた。
「特務機関、三島三朗……」
アタシはそれだけの名刺の内容を読み上げた。
「特務機関は仮だ。そうだ、シュウジ君が機関の名前を付けてくれても構わないよ。すまないが今のところ、君たち在っての機関ということになるからね」
「そういうのいいです。説明を続けてください」
つい口調が強くなってしまう。
気持ちを落ち着けようと、アタシはお茶を啜った。
いやに苦い味がする。
「大世界の人工島の消失事件は知っているかな」
大世界の人工島は、300年前、全世界が総力を結して造った人口島だ。世界のトレンド、世界の技術、あらゆる人種が平和に暮らしていた、人口一億人の世界の首都。
それが三年前、一夜にして消失した。
たった一本のホーリーチェリーの開花によって。
ホーリーチェリーは島中に毒を撒いた。
そして花びらはつむじ風のように舞い続け、全てを切り裂いた。
島の全てを。
「エリア栃木に蕾を付けているホーリーチェリーは、大世界の人工島のおよそ80倍の大きさだ」
それは、世界の終わりを意味する。
シェルターは意味を為さなかった。
「君たちには、ホーリーチェリーが開花する前にハイドロレイダーに乗ってもらって、バーキングアローを当ててみてもらいたい」




