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「お、お菓子も食べる?今度二人が来た時に出そうと思ってた羊羹なんだけど」
食器棚のおやつスペースから羊羹が出て来て、幸子が目を輝かせる。
そういえば、夕ご飯食べてない……
羊羹の優しい甘みが、アールグレイと一緒に体に染みていくのが心地良かった。
「ショーコさん、もごもご、お母さんも家ですか?」
シュウジよ、食べるか喋るかどちらかにしておくれよ……
「あぁ、母さんは買い物に行ってて……」
「ってコトは、ショーコちゃんのお母さんはホントの新宿ってことだね☆」
「良かった……」
アタシは安堵した。
じゃあ、飲み終わったら直ぐにワープすればいいんだ。
ほっとして紅茶を啜ろうとしたけど、幸子とシュウジの様子がおかしい。
「あのね、ミカ。私、さっき皆んなに触れてる状態でワープボタンを押したんだけど……ちょっと装置が効かなかったっていうか……あ、私は知ってたよ、ショーコちゃんのお母さん買い物に行くって言ってたから居ないってコト」
「えっ、それはわかったけど、それって……」
「僕もさっきからサブローさんに通信しようとしてるんだけど……ちょっと電波が悪いっていうか……」
いやいやいや、いや待って。
「つまり……つまりアタシたちってさ、」
幸子もシュウジも、ウフフ、ふふふと微笑みながら、やけに優雅に紅茶を口に運んだけど、アタシのカップはカチャカチャと鳴り始めた……




