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「ミカッ!!!」
幸子が階段を登って来る足音がした。
「シュウジ……遅い……よ……」
「ごめん、部活だった」
「……カ君、すまない!ジャケットの生体治癒効果で、応急的に傷は塞いだ。少し痛いだろうが……」
「……大丈夫です、動けます」
シュウジに支えられてむくりと起き上がる。
背中や手足の傷口がズキ、と痛んだけれど、さっきよりましな気分だった。
「ミカ!ごめん!!援護しきれなかっ……血が!!!」
「うわ……でも見た目より大丈夫そうだから平気」
……じゃないかもしれない。
怖くて目の奥が熱いし、口がカラカラに乾いていた。
でも……
「なんか光ってる、この階段」
「う、なんか修業の道のりみたいって記憶になってて……ホラ、この道を行けば、新たな力が手に入るみたいなさ……」
記憶より、いやに長い。
多分、アタシが抜けたら、ショーコの居る場所には辿り着けない気がした。
「シュウジ、水筒持ってる?」
「うん」
シュウジはいつだって体を動かしたいタイプだから、だいたいいつも、水分を携帯している。
アタシはそれを貰って不安な心を満たした。
「行こう」
青空を思い出す。
この階段、辛かったけど、あの日の空は青く澄んでいた。
「ミカ、晴れて来たね」
幸子がアタシの手を引く。
「うん」
あの日もこんな風に、ショーコが手を引いてくれたからアタシは……




