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「……間に合うの!?」
サブローは応えない。
「ミカ!!!」
「行くしかないじゃん!!!」
アタシは宙に浮かぶボロボロの階段に飛びついた。
「くっ!」
「あ、危ないよ!!ミカ!!!」
「援護して!幸子!!わっ」
「ミカ!!落ちる!真紅の爆炎!!!」
アタシのすぐ背中に迫っていた猿が消えた!
「アタシたちは……」
なんとか体勢を立て直し、すぐ上の階段の残骸に飛びつく。
「失うわけにいかないでしょ!友だちを!!!」
ムリでも!道が見えなくても!!!
「やだっ」
決意したばかりの心が折れる……猿たちの動きが速い!!
それを必死に振り切る!!!
——アタシは絶対に諦めない!!!!!!
…………急に……風が涼しく感じた。
ジャケットを、引っ掻かれたかもしれない。
獣の金切り声が、いやに近くで聞こえるのに、耳の中で木霊して、幻のようにも感じる。
「ミカぁぁあああああ!!!」
幸子の泣きそうな絶叫が聴こえる。
……痛。
ブワッ——!!!
急に、天地が逆になる。
「えっ……落ち……て……————」
桜色の紫が……
「綺麗……」
怖い……くらいに……
「姉!!!」
「痛ったァ!!!!」
柔らかいモノに包まれながら、アタシは石の踊り場まで転がり落ちた!!
「僕が……」
背中と両手足がズキズキと痛んだけれど……
「僕が覚えてるから!!!」
抱えられた体が、暖かかった。




