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「真紅の爆炎☆☆☆☆☆☆」
並行亜空間内の山頂に近いケーブルカーの駅が見えて来た。
そんな場合じゃない、そんな場合じゃないのに、懐かしさに干渉に浸る気持ちが溢れる。
麓からこの駅に、わくわくする気持ちでケーブルカーに乗ったこと。
よく晴れたあの日。
展望エリアからの晴れやかな眺望。
もうすぐ頂上だね、と笑い合ったあの日。
もう、あの時のみんなと山を登ることはないのだ。
「……カ君……ミカ君」
ジャケットに内蔵された通信機から、サブローの声が、聴こえにくいけど、ちゃんと聞こえていた。
「ディストレスはショーコ君の記憶に干渉している筈だ。ショーコ君が居るとすれば、最も思い出が深い場所だと思う」
「わかりました!」
そう、アタシだから分かる。
ショーコが居るのは頂上だ。
展望エリアから更に頂上。
沢山の階段を登って、神秘的な鳥居を更に超えて、凄く大変だった先で見た、緑に囲まれた東京の展望……。
春の風と、未来への希望が吹いていた。
お弁当も美味しかった!
「ミカ!こっち!?」
敵も溢れて来る。
「うん!」
アタシたちは上へ、上へと向かっていく。
「わかった!……って……え?どゆこと?」
幸子の足が止まって、アタシは幸子の背中にぶつかった。
「ぶっ!……幸子、どうしたの?……えっ?」
階段がある筈の場所が……壊れていた。
剥き出しの亜空間が頂上へ続く階段を飲み込んで、ぼろぼろの階段が、宙に浮いている……。
道は、断たれてしまった——。




