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「今……ライズブレスに水素高炉以外のデータをトレースしている。リスクは……この技術の試験が終わっていないこと。並行亜空間内に、ディストレスがいるかもしれないこと。そして」
コックピット内——。
ブルーのライズブレスに力を感じながら、HyLAの白ジャケットが自動着用された瞬間に、両腕に緑のガントレットが装着される。
「ジャケットの周りに透明強化シリコン、宇宙服のような膜が装着されている。デザインが変えられないから、君たちの所属が割れてしまう」
それは、ショーコにアタシたちのやって来たことがバレてしまうということ。
でも、そうかもしれないけど、そんなことよりもまずアタシは、嫌なデジャヴを感じていた。
サブローがこんな風に一択の質問をしてくる時……おそらく今、エリア高尾山に行かないとショーコは……もっと悪ければ、世界が……。
ふわ、と景色が変わる。
蒼いトレーニングルームの演台にサブローが立っていて、アタシの隣にはピンクのガントレットをした幸子が居た。
サブローの見えない目を見つめる。
「acceptationだね」
アタシたちは頷いた。
サブローはいくつものホログラムモニターとホログラムキーボードを展開し、アタシたちのメディカルチェックを済ませ、同時にいくつものプログラムを打ち込んでいく。
「危険が迫ったら躊躇なくいつものワープボタンを押して欲しい。ガントレットから、水素針の射出、通信も可能。いつもの要領で打てる筈だ。いいね」
「「はい」」
「ミッションは、並行亜空間内でショーコ君の捜索。身体の一部が触れている状態でワープボタンを押せば連れ帰れる仕組みだ。準備が出来たらそこのCircleに乗って欲しい」
ショーコまで失うわけにはいかない、絶対に。
迷う気持ちなんて無かった。




