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ビー!ビー!ビー!ビー!……——!!!
幸子がウェストバッグからホログラムモバイルを取り出す……が、その瞳はモバイルじゃなくてアタシを見て……るんじゃない。
「……嘘。」
スローモーションのように振り返る。
今閉めた、ショーコの家の可愛らしい真鍮の門が……
「消え…………えっ?……」
玄関までの石畳も、緑色のドアも、四階建ての縦に長いショーコの家そのものが……
「ミカっ!!!」
どこか幻みたいな強い衝撃。
幸子の姿が飛び込んで来て、アタシの居た場所から硝煙が昇る。
視界の端の夕闇に……
(雲……?)
「あっ……」
(電柱にぶつか……)
幸子の姿が壊れたTVみたいに消え…………
「痛っ!!!!!!」
狭いカプセルの中に、アタシは激突した!
「えっ何!?」
暗いモニターの横に、シュウジが好きな猫のキャラクターのキーホルダーが揺れる。
「ミカ!大丈夫!?」
通信機から幸子の声が響く。
「大……丈夫……」
「私はコランダムの中!無事!で、サブロー氏、これはどういうこと!?」
アタシはコックピットに座り直して操縦管を握った。
柔らかな光が、コックピット内に溢れていく。
「強制転送だ、二人とも済まない」
「大丈夫ですけどそれよりも……」
ショーコは……ショーコは——怖くて唇が動かなかった。




