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「元気になって貰うって、ムズカシイよね……」
幸子がぽつりと言った。
「家族に、みんなに、元気になってもらいたくて歌い始めたのに。……死んじゃったりさ。喧嘩したりさ。……変なカッコしたりさ」
「べ、別にそこまで変じゃなくない?まぁ、学校で何も言われないのかは少し気になるけど」
でも、何も言われないのかもしれない。
少し暖かな午後の青空。
……アタシはそう思った。
もしアタシが、急にゾンビの格好で学校に行っても、ショーコは少し笑うだけだろう。
担任の綾野先生も。
それより、幸子は好かれたくてアイドルをしてるんだと思ってた。
でもそれだけで人を元気にしたり、輝くことは出来ない。
幸子の弱音が妙にしっくりきて、アタシは幸子を元気づけたい気持ちになった。
アタシは幸子の歌から元気もらってるよと言ってみたけど、幸子は知ってる〜と言って口笛を吹いただけだった。
未来への飛翔を描いた卒業ソング。
「えへへ☆もうすぐ春だし」
幸子が吹くそのメロディは、綺麗で、少し寂しくて、優しかった。
「あー、泣いてるの?ミカ☆」
「泣いてないよっ……楽しみだし!大人になるの」
「……だね」
辛いことも、あるかもしれないけれど。
昔は描けなかった未来。
今は少しだけ掴めそうな気がした。




