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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
階段を昇る春風……——別れのハミング
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 ベージュのベンチにベージュのパーカーの幸子さちこ


 青空みたいなスカートが春風に揺れて、膨らみ始めた桜のピンクを見上げる瞳にエモーションが重なる。


「はい、缶ミルクティ」


「ありがとミカ。いい公園だね」


「ん」


 小学校の近くの小さな公園。


 いくつかの古びた遊具に赤い滑り台と蔦が伸びた屋根付きの砂場。


 ポプラが二本と一本の桜。


 小さな公園だ。


 アタシも幸子さちこの隣に座って桜を見上げる。


 怖さもぎる。


 でも、綺麗なものは綺麗だ。


 プシュ、と缶を開けると、ふんわりと甘い香りが昇って来る。


 ショーコとも良く来た公園だ。


 アッサムの苦味が、懐かしい記憶を呼び覚ます。


 苦みも、いいことも。


 この、ミルクティみたいに優しいことも。



「ミカ、ジュン氏ってさ、何であんなスタイルなの?」


「え?」


 幸子さちこはジュンの話をする時、遠い目をする。


 ジュンのお父さんも亡くなっているとシュウジに聞いた。同世代だし、なにか複雑なシンパシーがあるのかもしれない。


「最初は長めのマッシュヘアというか、格好も詰襟の中学生って感じだったけど。まぁ、男子だからじゃない?」


「何それ」


 不服そうに、幸子さちこは缶に口を付けた。


 ジュンはそうちゃんと少し似てる気がしていた。


 いつか、元気になるかもしれないし、そう思いたい。

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