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「で、あの長髪君、なんなの?」
「なんなのってなんなのよ?……ていうか幸子、仕事は大丈夫なの?」
学校帰り、三叉路で待ち構えていた幸子に、アタシは訊いた。
春休みのツアーに向けて、幸子は忙しい筈なのに……。
「今日は休憩!いーから帰ろ!☆……てゆか、まさかあの長髪君も地下基地で暮らすの?」
強引に手を引かれて、アタシはセキュアランドセルの肩ベルトを直しながら、帰路に就く。
シルバーアッシュの背中にしっくりくるセキュアランドセルは、あんまり新しい型では無かったけど、6年間のアタシの学校生活と安全を支えてくれた大切な鞄。
もうすぐお別れと思うと、しんみりしてしまう。
「ミカ?」
「あ、あぁ。ジュンは暮らさないみたい。調布に家があるんだって。まぁワープ回路は繋がってるみたいだけど」
訊いたわりに興味が無さそうに幸子は俯いた。
節分を過ぎて、段々と日が長くなってる気がする。こんな午後は、お気に入りの公園で、あったか〜い缶ミルクティでも飲みたい気がした。
「ねぇ幸子、西大久保公園で缶ミルクティでも飲んでく?」
「えっ?」
幸子は驚いたように、振り返った。
「あ、うん」
「髪色変えて、フード被りなね」
アタシは幸子に、パーカーのフード被せてやった。




