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「僕は家族のため、世界のために、ハイドロレイダーに乗りますヨ」
ますヨって何だ。
アタシは知っている。
弟は、ロボットが好きだ。古代のアニメーションや、古代のゲームの復刻版に、食い入るようにハマッていた時期がある。
どちらかというとアウトドア派な弟の籠りっぷりに少し心配したけれど(我が家では本来、引き籠りはアタシの専売特許だ)考え抜かれたギミック、目を奪われるエフェクト、熱が稠密する世界感に惹かれる気持ちはわからなくもない。
「ていうか、白炎の炎とか、なんなわけ……?水の力って言ってたじゃん。『俺』とか言ってるのも、聞いたことないし」
「薄明の光が白炎だよ。ぶつけるって言ってたから、炎のほうがかっこいいかなって思ってさ」
確かに、思い返すと薄明光線が降り注ぐ様は、白い炎の矢が降り注ぐようだった。
けど言っときますけどアタシは、普通に乗りますからね。
「あとで教えてあげるから姉もやりなよね」
いや、やりませんからね。
「ほい」
アタシの前に、猫のタンブラーが置かれた。
カフェラテの匂いが、気持ちを落ち着かせてくる。
「母も、ほいよ」
ちゃぶ台にコーヒーが三つ並ぶ。
ふぅ、と吹いて、カフェラテを飲む。
この、ちょうど良い苦みを出せるのは弟だけだ。
母も満足そうに息をついていた。




