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円盤が、暗い森の中のアスファルトの駐車場に着陸した。
無の森……
ここが終わりの地であればと願う。
足の拘束を解かれ、男に言われるがままに歩いた。
氷のような街灯が点々と並んで、背中が冷えていく。
風が、森を討つ。
「俺も、初めて来たんだ」
ひとりごとのように男が言った。
道が開けた。
月が襲いかかってくるような野原に、星のような球体がいくつも浮かぶ。
追悼の、悲しみの魂たち。
「ここは……」
美しささえ覚える悲しみ。
「こんなところに俺は!」
目の前に立つ緋色の男に、再び憎悪が走った。
「こんなところに……」
月光を浴びて、地獄の使者のように、美しく靡く……髪……
「俺は!!!」
外されたゴーグルと髭の向こうには、どこか見たことのある表情……
「俺は!!!!!」
美しく虚なその瞳は、鏡を見ているように、吐き気がした。
「どうして?」
鏡の中の自分が言う。
「どうして来たくなかった?」
思い出したくなかった。
「違う!」
忘れたくなかった……
「そうだ!……でも……」
何で……俺なんだ……
「気づきたくなかった」
どうして俺は……
「わたな……べ……」
俺が……どうして……
「どうして俺が生きてる!!!」
ここは大世界の人工島消失で失われた人々の記憶を弔った地……。
「……どうしてだろうね」
悲しい微笑……
「記憶野原。俺も初めて来たんだ」




