148/734
144
「か……」
星ヶ咲萩爾が、コックピットモニターのワイプに映るハイドロレイダーの姿を見て震えている。
「っこいい！！！」
「シュウジ、不謹慎って言葉をさ……」
「分かってマスヨ、お姉サマ。僕は家族のため、世界のためにレイダーに乗ってイマスヨ」
馬鹿馬鹿しい。
緋色の男に言われたから……力に抗う労力を冷静に考えて、ただ乗っているだけだ。
だが、このコックピットも、特務機関HyLAのジャケットも、悪くは無かった。
メディアで多く映るハイドロレイダーはカーキ一色だが、我が乗ることによって変化した、ホワイトがベースの機体、真っ白な水素球発射装置、三日月のような翡翠の鍬形に翡翠の籠手。
月のように輝く瞳。
……心が、熱くなって来る。
対象の蕾は、肉眼でギリギリ捉えられる遥か彼方。
怪しげな雲も、十二支型AIdも、この距離であれば発現しない可能性が高いと緋色の男が言った。
この射程、当てたらアツい。
「開花はずっと先だ。落ち着いて狙って」
緋色の男の声が響く。
モニターの照準器が、ディストレスを捉えようとしている。
白い……巨大な蕾。
シュウジが合図を出す。
「「「薄明の光が、彗星となる」」」
光が、発射装置に集まっていく。
「「俺の力を光に変えて」」
「私の力を光に変えて」
「「「貫け」」」
心が……
「「「ディストレス！！！」」」
……静かだ。
「「「ハイドロバレット！！！」」」
これは……
「「「メテオ！！！」」」
新しい絶望だ。
