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「相良、純之助君ね?」
蒼の空間に、美しい声が響いた。
透明な結晶のように儚く美しい声に、呼ばれた記憶なんて、過去に一度もない。今見た景色も、この声も……夢の続きなのだろうか……否、これが終わりの始まりなのか……?
救世主たちは、今度こそ事をし損じ、ここは我の死後の世界か、または、レイダーの墓場なのか……
蒼い空間の光を全て集めたかのようにクリスタルの輝きを放つような、神話の世界の美しき知の女神アテナがそこに居た。
否、我はこの女神を知っていた。
「鑑原由子さんだ。今日からしばらく、君のサポートをしてもらう」
緋色の男の声が、幻聴のように響いた。
u-co……純真なる美の化身。世界の秘宝。我の妄想の中の、唯一のオブザーバー。
これは……きっと夢だ……。
「残念だけど、夢じゃないよ」
緋色の男の手のひらに、白いブレスレットが現れた。
我はあれを知っている。
くだらない妄想の一欠片。
もしも我が搭乗者だったら……。
くだらない。
済んでしまったことは、今更どうにもならない。
いつか終わりを迎えることだけが、卑しくも糧となる日々。我に未来などない。
「君なら知っている筈だ」
我の何を知っている。
でも、我はこれを知っている。
「これは、君のものだ」
レイダーのライズブレス……
「宜しくね、相良君」
クリスタルの声が、砂漠で見つけたオアシスのように煌めいて響いた。




