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第七話 一触即発?



 ヴァイスヴァルト城に着き、わたしは馬から下ろされた。


 すぐに門が開き、金髪の青年が出てくる。


「……まさか、エヴェリーン様ですか?」


「ええ。あなたは?」


 短い金髪はきれいに撫でつけられており、目は上品な若草色だった。


「執事のマクシミリアンと申します。お待ちしておりました――が、明日のお着きだとうかがっていたのですが」


 まだ若そうなマクシミシアンが執事だということに驚いて、それから「明日の到着」となっていたことに、また驚いた。


「なんですって? 王城から、手紙が届けられたはずよ。わたしが今日、到着すると」


「本当なんです。疑うなら、手紙を見てください。とにかく、なかへどうぞ」


「ええ」


「……俺たちは、ここで」


 とジーグルトが言って馬に乗ろうとしたので、わたしは慌てて止めた。


「だめよ。お礼をしなくちゃ。――マクシミリアン。わたし、偽物の迎えをよこされて盗賊に襲われたの。そこを、彼らが助けてくれたの。城に招いても、いいわよね?」


「は……。どうぞ」


 マクシミリアンはジーグルトをいぶかしげに見ていたが、先になかに入っていった。


「礼なんて、いいのに」


 ジーグルトは気が乗らなさそうだった。


「いいから、入って。わたし、あなたにも話を聞きたいのよ」


「……わかった」


 諦めたように、ジーグルトは厩舎のほうから走ってきた馬丁らしき男に手綱を預けていた。ディートリヒも、彼にならう。


 わたしは、すっかり遠くなったマクシミリアンの背を追い、そのあとをジーグルトとディートリヒがついてきた。


 


 わたしは書斎に通された。


 書斎の机に置いていた手紙を取って、マクシミリアンはわたしに手渡す。


 既に封が切られた封筒から、手紙を取り出す。


 手紙は短いものだった。


『王家はヴァイスヴァルト辺境伯家の遠縁であるエヴェリーン・フォン・ヴァイアーシュトラスを、次の領主および辺境伯として推薦する。彼女の働きに不満がある場合は、王家に知らせるべし。エヴェリーン嬢の到着は十一月十一日。領地の境にある宿舎の前まで迎えにきてほしい』


 今日は、十一月十日だ。


「本当だわ。明日の日付になってるわ。……手紙を書いたのは、誰かしら。署名がないわね」


 王家は祐筆(ゆうひつ)(代筆家)も雇っているから、祐筆が書いたのかもしれないけれど、署名もないとは奇妙だった。


「私も、不審には思ったのですが……王家からの伝言ということで、そういうものかと思いまして」


「そうね……」


 手紙には、しっかりと封蝋で封がされており、封蝋の紋章は間違いなく王家の紋章だった。


「一体、誰がこんなことを」


 マクシミリアンが眉をひそめたところで、わたしは陰鬱な気持ちになった。


 心当たりが、ないでもない。


 口を開きかけたとき、ノックもなしに誰かが入ってきた。


「おーい。一日早く、客人が着いたって本当か?」


 真っ赤な髪を後ろで一つに束ねた青年で、深緑の――騎士の制服と思しきロングコートを着ていた。


 彼の目の色は、温かみのある赤茶色だった。


 颯爽とした外見で、いかにも伊達男といった雰囲気。


 ヴァイスヴァルトって、美形の産地なのかしら。


 着いてから、逢う男性がみんな――ことごとく美形だわ。


 そういえば、北国には美人が生まれやすいとも言うっけ。


 わたしがくだらないことを考えている間に、新たに現れた男はジーグルトにつかつかと歩み寄り、つっかかった。


「てめえ、なんでこんなところにいるんだよ」


「彼女が盗賊に襲われていたので助け、ここまで送ってきただけだ」


「ああ?」


 え? このふたり、知り合いなの?


 長身の男ふたりがにらみ合う姿には迫力があり、わたしはすっかり気圧されそうになってしまった。


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