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最終話 夏の花嫁と狼の王(2)



 神殿で、わたしたちは神官から祝福の言葉を受け、向き合っていた。


 椅子には、参列者が座っている。


 カーテもさすがに、おとなしくしていた。


「エヴェリーン・ヴァイアーシュトラス・フォン・ヴァイスヴァルトと、ジーグルト・ルドルフの結婚を神の名の下に、認めます。新郎ジーグルト、そなたは健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「誓います」


「花嫁エヴェリーン。そなたは健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「誓います」


「よろしい。また、此度は花婿が花嫁の家に入る婚姻となる。ジーグルト・ルドルフはジーグルト・ルドルフ・フォン・ヴァイスヴァルトと名を改めるように。それでは誓いの口づけを――と言いたいところですが、今回は種族を超えた婚姻です。国王陛下から、さらなる誓いの言葉を預かっています」


 神官の言葉に、わたしは戸惑った。


 それで、陛下は神官をわざわざ王都から派遣したのね。


「かつてヴァイスヴァルトを治めていた狼の王――その血を引く者よ。戦争によって流された血があり、恨みがある。そのことを呑み込み、ヴァイスヴァルト辺境伯領に協力し、獣人族の王を再び名乗ってほしい。かつて奪った称号を、イェーアル王の名の下に、そなたに戻そう。ヴァイスヴァルト辺境伯領には領主と王が立つ。それに異論は?」


 神官に問われ、わたしは「異論なし!」とすぐに返事をした。


 ジーグルトは戸惑っていたようだったが、「異論なし」と厳粛に答えた。


 爆発的な拍手が起こる。


 特に強く手を叩いているのは、獣人たちだった。


「狼の王よ、共に統治しましょうね」


 わたしが一礼すると、ジーグルトも微笑み一礼した。


「この婚姻が、人間と獣人族の架け橋となりますように。さあ、誓いの口づけを」


 神官に促されて、ジーグルトはわたしのあごに手をかけて上を向かせた。


 目をつむると、温かで柔らかな感触が唇に触れた。


 口笛とヤジが飛び、「こらっ!」と叱る声が聞こえて、わたしは笑いそうになるのをこらえた。


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