最終話 夏の花嫁と狼の王(1)
わたしは王に手紙を送り、狼族の王ジーグルトと結婚したい旨を知らせた。
王からは、結婚を認める内容と祝福が綴られた返信が来た。
また、王はわたしの働きを鑑みて、正式にヴァイスヴァルト辺境伯と認めると宣言してくれた。
一応とはいえ、まだお試し期間だったことを、すっかり忘れていた。
そのため、わたしの名前はエヴェリーン・フォン・ヴァイアーシュトラスからエヴェリーン・ヴァイアーシュトラス・フォン・ヴァイスヴァルトとなった。
かくして、わたしとジーグルトは夏に結婚式を挙げることになった。
結婚式には、身内を呼ばないといけない。
当然、カーテも来た。ついでにオトフリート様も。
結婚式の前日に城に着いたカーテを迎えると、彼女は勝利の笑みを浮かべていた。
「お姉様も、落ちたものね。獣と結婚するなんて」
「こら、カーテ」
オトフリート様にたしなめられて、カーテはふんっと鼻を鳴らしていた。
相変わらずな子、と思いながらわたしは笑顔を取りつくろう。
まあ、いいわ。言ってなさいな。
幸せだからか、特にカーテに腹も立たない。
だけど、あんまりな態度には一言言っておかないといけないだろう。
「ジーグルトは、狼族の王よ。狼族の王は、かつての獣人族の王と呼ばれたのよ。わたしは、ヴァイスヴァルトのかつての王と結婚するようなものなの。領主としても、最適な結婚だわ」
「ふうん」
カーテは興味がないようだった。
「それより、カーテ。わたしに嫌みを言うのはいいけど、それをしっかり婚約者に聞かせているのは感心しないわね。オトフリート様なんて引く手あまたなんだから、見限られないようにね」
ぴしゃりと言ってやると、カーテは顔を真っ赤にした。
「お姉ちゃんとは違うわ! ねえ、オトフリート様?」
「……あ、ああ」
既に、オトフリート様は若干引き気味だった。
痛い目に遭っても知らない、とわたしは肩をすくめる。
同情はしないわよ、カーテ。あなたの言動のせいなんだから。
メイドに彼らの案内を頼んだあと、わたしは次の来客を迎えた。
王太子殿下と、クラリスだった。
「クラリス! それに殿下。来ていただけて、うれしいです」
「エヴェリーン、おめでとう」
「君には世話になったね。命の恩人だ。あの、狼の彼と結婚か」
そういえば、王太子殿下はジーグルトと顔を合わせたことがあったのだった。
ふと、不思議な気持ちになる。
偽者の王太子が持ってきた話を受けた――というか受けざるを得なかったから、わたしはここに来た。
そうして、彼と再会して結婚することになった。
運命って、わからないものね。
王太子たちを見送ったあと、進み出たのは伯父だった。
「エヴェリーン、おめでとう」
「ありがとうございます、伯父様」
わたしたちは握手を交わし、それ以上の会話はしなかった。
これで、いいのだろう。未だにわたしの伯父への気持ちは、微妙なものだったから。
式には、ミヒャエルとコルネールも呼んでいた。
彼らは狼族と一緒に、当日にやってきた。
コルネールに会うなり、懐かしさのあまり思い切り抱きしめてしまい、「エヴェリーン様、苦しいよ」と笑って言われた。




