白馬の王子様
私は
お茶を入れてから
リーナとショーンへ 夜会で起きたこと、扉を出てからルイ様にどれだけ助けられたか…ということを改めて語った。
二人とも時折り 青ざめたり 真っ赤になったり していたが
ルイ様の話になると 穏やかに聞いていてくれることが殆どだった。
「お嬢様、分かりました。」
と、ショーン。
「私めが 即刻王子カップルを殺って参ります!」
何故だ! 穏やかなじぃじのはずのショーンまでもが リーナに感化されている。
リーナ 伝染するんですか?
「ちょ…ちょっとまって! 望んでないから!
穏便に婚約破棄できて 死刑や拘留もなくて 没落もしなければ大丈夫だし。」
「な…なんと お心の深いことか!」
いやいや、そんなことは全くもって ないからね。
「でも、どうふるのよ。こえから。」
なに?この言い方?
横を見ると、リーナが口いっぱいにクッキーを頬張りながら喋っていた。
リーナ、心が落ち着いたのかしら。
でも、くつろぎすぎよ。
まぁ…仕方がないか。
甘いものは 安心するのよね。
「私も 食ーべよ!」
令嬢らしからぬたべかたをしてやるわよ!
「若い女の子は甘いものに目がないですからのー。」
ショーンは お茶を飲みながら 私達が パクパク食べているのを眺めていた。
「ま、取り敢えず しばらくの間は 邸でのんびりなさるのが良いでしょう。
あまり、出歩かず ひっそりとしていらっしゃれば 噂など75日程でなくなっていくでしょうな。」
…な、長いわ。
お爺ちゃんの ショーンなら 一瞬かもしれないけれど
一応 まだまだ若い私には 居られないかも知れない日数…。
3日位で済めばいいのになー。
「ショーン爺、無理よ!
お嬢様がそんなに長く籠っていられるわけ無いでしょう?」
そうそう 無理よムリ。
「常に 動き回っていないといけないでしょ?回遊魚なのよ。
そして、常に新しいものを見つけて 極めようとする。
一処に落ち着かず あちら…こちらへふわりふわり。
そんなお嬢様が 75日もじっと邸に籠っていられるとでも!?
そう…答えは ノーよ!!」
…何だか すごい言われようだわ。
ま、一週間くらいは大人しくしていないとね。
リンゴーン
そう考えていると 玄関ホールのドアチャイムの音が鳴り響く。
ショーンは背筋を正し
「どなた様でしょうな?」
足早に立ち去った。
今日は、どなたも見える予定はなかったわね。
そう考えるが早いか
「お嬢様ぁぁーーー!!」
ショーンが老体とは思えぬ速さで走ってきた。恐らく 世界最高記録を超えているわね。
「どうしたの?もしかして、賊の侵入かしら?」
「とんでもありませぬぞ。」
「は、は、白馬の王子様です。」
えっ?
今、このフレーズで思い当たるのは一人しかいないのよね。
「まさか?」
「その、まさかですぞ。」