魔力量
ルイ様は 私を見つめた
私も ルイ様を見つめる
「ちぇっ! 何だよ! 尋ねたのは おいらなのに 蚊帳の外かよ!」
ジークエンドは ブツクサ言っているが 気にしない。
「この指輪の力は無限大だ。扱う君には 膨大な魔力が眠っている。
これまでは、皇太子の婚約者ということで 誰一人として、手出しが出来なかったが、婚約が破棄されたという噂は既に街中にまで広まっているであろう。どんな者が、君を狙ってやってくることか…。」
…うん?
私に 膨大な魔力がある?
いえいえいえ…買いかぶりすぎですよ!
ノーコンなだけです。
「いいや。お前には、相当な魔力が眠っている。
ノーコンなのは、膨大な中から ほんの少しを出そうとすることが 出来ていないからだ。
いっぱい空気の入った風船に 針で穴を開けて 空気を少しずつ出すようなイメージなのだが、お前には、そのコントロールが、全くもってできていないんだ!
針の穴どころか 何故か 拳程の大穴を開けて出しているのが、いつものお前だ。」
そ…そうなのね。
私、コントロールが 出来ていなかっただけなのね。
………………
ちょっとまって。
そのコントロールが、出来ていないって、致命的よね。
魔力センスが無いのかしら……。
ガビーーーーン!!
「安心しろ。
だから、ルイは 俺様をお前につけさせたんだな!
俺達 妖精は、魔力のコントロールに長けている。
お前が 勝手に出力を上げたら、俺様が そこをうまくコントロールしてやるんだ。」
えっ!?
…私の長年の悩みが、か、解消するの!?
思わず 過去の訓練を思い出す。
「お嬢様ー!!
的はここですよー!!」
魔力のコントロールの為の先生が
的のそばで 呼びかける。
「先生ー!離れてー!」
「大丈夫!大丈夫!」
くっ! も、もう堪えられないわ!
「しゃがんでーーー!!!」
ブォーーーーン
魔力の弾は、いや大玉は すごい勢いで
的?いや、先生寄りで 飛び出していく!!
「よけてーーー!!!」
必死で 放った手を上げる 軌道を少しでも変えねば 先生に直撃してしまう。
魔力の塊が 先生に到達するが早いか
軌道をずらすことが間に合うか…
すんでの所で 先生がしゃがみ込む。
軌道もわずかだが 上へとそらすことができたようだ。
少しばかり、ホッとしたところで
ゾリっ…
嫌な音がした。
よく見ると せ、先生の頭が…
首も…ある 顔も…ある 頭の丸みも…ある。
残念ながら
無いのは 髪の毛……
見ていた人が 唖然とする中
気づいていないのは 先生一人…。
「お嬢様、あんな最大限を超える力を出しては いけませんよ。
あんな力いっぱいでは 魔力不足を起こして倒れてしまいます。
そして こんな街中である邸内で、全力投球してしまえば、どんなにか 酷い被害となることか!!」
最大限…
いえ、大して 力 出していないんです。
なので、魔力不足 大丈夫だと…
もう、そんなことより、頭上が気になって仕方がない。
光ってるのよ!
日光を浴びて!
ぴっかぴかの つるっつる!
遠巻きで見ていた 従者達が 肩を震わせているのがわかる。
す…ずるいわ。
ごめんなさいね。先生。
たとえ、私の責任だとしても 一緒に笑いたいわ。
先生には、魔女たちの作る、秘伝の毛生え薬をお詫びに渡さなくては!
「聞いているんですか?
いいですか。だから、魔法を侮るなと……」
お説教をしながら
髪をかきあげる仕草をとった
先生がフリーズ し た。
頭頂部を撫でている。
爽やかな風が吹いた…。
みんなは 見守っている。
………
沈黙を突き破ったのは
間違いなく 先生だった!
「おぉーーのぉーーー!!!」
「な なんですか!
わたしの自慢のストレートサラサラヘアーが!!!」
この後 お説教は長く続いたのよね…。