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第一話 

「お嬢様、お嬢様っ!誰か、誰か来て!!」


私の体を揺らしながら必死に叫ぶメイド。


対数十秒前、紅茶を飲んだ私は意識がもうろうとして床に倒れこんだ。


そして薄れゆく意識の中で見てしまった。


私の身体をゆすりながら笑みをこぼすメイドを。


そして気づいた。


あぁ、私は――――――――



――――――――――毒を盛られたのだと。









「お嬢様、こちらのお茶はどうされたのですか?」


私の友人ともいえるほど親しいメイド、メイ。


好奇心旺盛で明るく、穏やかな性格のメイはティーカップに入っている薄紫色のお茶を見て私に問いかけてきた。


「それ、触っちゃだめよ。猛毒だから。」


今年で7歳になる私、シャーリー・ブラッディはメイに決して子供の冗談ではないとわかるように淡白に返答した。


するとメイの顔色がゆっくりと青ざめていく。


最初は私の言葉を処理できなかった脳が徐々に私の言葉を処理し、理解に変わったのだろう。


「きゃぁぁぁ!ど、毒ぅぅぅぅ!?」


旅芸人のコメディアンかと思うほどの驚きようを見せてくれるメイ。


そんなメイを見て私は小さく笑いをこぼした。


「あ、お嬢様、笑わないでください!」


メイの反応を見て笑う私を見てメイが頬を膨らませながら顔を真っ赤に染めて恥ずかしがりながら怒ってくる。


それまたかわいいと思えてしまうのだ。


どうにも笑いは止まらない。


そんな私に対しメイが折れる。


頬を膨らませながらも「もういい」と言いたげにそっぽを向くのだ。


そういう行動が一々可愛いと思えるのも実のところ、私が生きた年数が7年プラス17年の24歳だからだろう。


・・・・・・今からとてもおかしいことを言おう。


私は【死に戻り】という現象を体験した。


この世界には人の目には見えないけれど【妖精】という存在がいる。


その妖精に対し、知らずして善行を働いたものは妖精のいたずらという名の加護で幼少期までタイムリープすることがある。


とはいえ目には見えない妖精のすることだ。


誰もそれをまともに信じてはいない。


それに妖精に会ったことがないのだからどういうことが妖精にとっての善行かなんてわからない。


狙ってできることではないすごい事なのだが、どうやら私は生前、その狙ってできることではないことを成していたらしい。


『なぁリー。これはさすがに飲むのやめないか?お前なら死なないかもしれないけど、それはあくまで死なない”かも”だ。これ、少量でも死に至る毒なんだけど。』


私が善行を働いた妖精ことリトが先程メイが気にしていたお茶を見ながら冷や汗をかいて私に訴えかけてくる。


先ほど言ったように人の目に妖精は見えない。


けれど死に戻りをした者には妖精の加護を得たからか妖精が見えるようになる。


私は自分が死に戻りをした事実。


どうして死に戻りのいたずらを私にしてくれたのか。


そして私がリトに対して行った善行が何なのかを今より2歳若い歳の頃に死に戻りして教えてもらった。


以来リトと私は友達になり、私は日々リトにとあることを教わって学を広めていた。


そのあることというのはありとあらゆる毒についての知識だ。


リトは植物の妖精で毒に詳しい。


そしてリトに善行を働いた私が植物の毒によって殺されたことが許せなく、私を死に戻りさせたらしい。


死に戻り舌私は事実を知るや否や、自分の無知を嘆いた。


毒には無味無臭のものもあるけど、味やにおいがあるものも多い。


そして滅多なことがない限り無味無臭の毒など手に入らない。


つまり私は毒に関する知識があれば死にはしなかったということだ。


もちろん、人を見る目もあればなおよかったことだろう。


というわけで生き返った私は今度こそ同じ失敗を踏まないように自分の死ぬ理由となった毒に詳しくなろうと思い、毒について日々学び、日々研究している。


毒の使われ方、毒の応用の仕方、そしてどのくらいなら免疫をつけるために服用していいか。


そして何よりもしもの場合の解毒薬の開発。


前の人生で令嬢としての作法や知識は完全に手に入れていた私は今生はこのことに力を入れ、長生きできるよう努めようということだ。


とはいえ、7歳の少女が研究明け暮れているなど物珍しい上、私はこの国に二つしかない公爵家の一人娘だ。


私のこの奇行は口が軽いメイドからすぐに広まった。


おかげでほかの貴族たちからは【毒姫】と呼ばれるようになったけど無そんなことは気にしない。


私が怖いのは軽蔑の目や私を物珍しく見て笑うような行為じゃない。


怖いのは【自分が無知である】という事だけなのだから。


ちなみにその口の軽いメイドは決してメイの事ではない。


メイはいろいろ抜けてそうな性格だけど義理堅く口が堅い。


(私が死ぬまでいつもよくしてくれていたメイ。できれば今のメイにでもその感謝を返せる日が来るといいけど。)


なんてことを思いながら私はリトが忠告してくれたにもかかわらず猛毒のお茶を一口口に含んだ。


「お、お嬢様!?」


私から猛毒と聞いていたメイは大きな声で私の名前を呼んだ。


ひどく驚いたその声を聴いて「大丈夫」と声をかけたいけど喉が焼けて声が出ない。


私はすぐに近くに置いてあったこの毒に対する解毒薬の試作品を口に含む。


すると試作品とはいえもともとある程度の効果が期待できるものであったからというのもあって毒性を弱めることに成功したらしい。


毒を含んだ瞬間目が回り意識が飛びそうになったけど、少しくらくらする程度で息は落ち着いた。


(どうやら成功みたい・・・・・・。)


心の中でリトに届けと念じながらそうつぶやく。


実は妖精とは不思議な存在で、このように届けと強く願えば心の声を受け取ってくれるらしい。


そして受け取ることができたら逆も然り。


けどどのみち人に見えない妖精であるリトは――――――


『成功じゃないだろ、全く・・・・・・。』


普通に大きな声でため息をつくのだった。

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