2021-04-14 g因子が理論値の2からずれていること
さて話を戻して、μ粒子の異常磁気モーメントの話である。
何が異常なのかというと、電子とかμ粒子とかτ粒子とか、それらの磁気モーメントの係数(スピンによるg因子と呼ばれているらしい)は理論的には2になるらしい。
ディラックさんが考えた方程式で計算すると、厳密に2になるらしいのだ。
ところが実際に磁気モーメントを実験で計測してみると2よりもちょっと大きくなっているとかそういう話らしい。この、g因子が理論値の2からずれていることを異常と呼んでいるとかそういう話のようだ。
実際にどれくらいズレているかというと、電子の場合だと測定されているg因子は2.00231930436256とかそういう値らしい。
0.002ちょっとくらいズレていることになるわけだが、このズレについては、素粒子論の標準模型で説明できていて、ズレの計算をしたところ測定値とかなりの精度で一致しているらしい。
一方で、μ粒子の磁気モーメントについては標準模型での説明の影響も含めたg因子の理論値が2.0023318361で、測定値が2.0023318414とかそんな感じらしい。
とても微妙な差だが、測定値の方が少しだけ大きくなっていて、この差については標準模型では説明がつかないとかそういうことなのだ。
じゃあ標準模型が間違っているかというとそんなことは多分なくて、基本的な話については標準模型はかなりの精度で説明できているので良い理論なんだけど、もう少し細かいことを考えるなら、未知の部分があるよね、標準模型にさらに別の要素を加えて拡張しないといけないみたいだね、ということになるっぽい。
その標準模型をどう拡張するのか、それからその拡張というのがどういう物理モデルから導かれるのか、というところが面白いポイントなんだと思ったりする次第である。
そこには新しい世界観のようなものが関わってくるだろうし、いまの素粒子論のイメージみたいなものを漠然と人類全体で共有しているところから、もう一段世界のほんとの姿に近いイメージに変わっていくかもしれないとか、そんなことを思わせる、それがμ粒子の異常磁気モーメントにはあったりするのだと思ったりする。知らんけど。