2021-05-27 チカラの影響が計算上は無限大
ドーナツちゃんのワラワラの密度差が重力なんではないかという話を始めたところである。
その話をするまえに、なんで標準模型では重力が語られてないのかをちょっと振り返ってみたい。
それには標準模型というのが、場の量子論を基礎にしているという事情がある。
強いチカラ、弱いチカラ、電磁のチカラは、それぞれ場の量子論を使っていい感じに計算されて実測値とよく一致する理論値が求まるわけであるが、そこには「繰り込み」という計算テクニックが使われているらしい。
なんでそんなテクニックがあるかというと、曰くは場の量子論で高エネルギーな場合の計算をしようとすると、計算結果が無限大になってしまうという事情があるらしい。
高エネルギーな場合というのは、素粒子の話で言うとすっごく近距離の話、というのとだいたい等しかったりするのだが、二つの素粒子同士が物凄く近い位置にある場合に、その間に働くチカラの影響が計算上は無限大になってしまうぞ、とかそんな話らしい。
例えば重力で言うと、二つの重い球が並んでいたとして、その間に働く重力は2つの球が近づけば近づくほど強まるわけだが、さてどんどん近づいていって素粒子と素粒子の間の距離くらいまで近づいたとしたら、どうなるだろうか。
重力は距離に反比例して強くなるということだが、さっきの2つの球が素粒子レベルまで近くに並んだとすると、そのむっちゃ短い距離を挟んで並ぶ2つの球にはたいへん大きな重力が働くはずである、そんなイメージが浮かぶだろう。
2つの球の間の重力により、球はまたその距離を近づけるわけで、そうすると重力がまた強まり……とまあ、こんな感じでどんどん強くなっていく重力の影響は、そのうち無限大になってしまうというわけだ。
そんな無限大になってしまうことを「発散」と呼ぶらしく、距離がどんどん短くなって無限大になるパターンを「紫外発散」というらしい。
さて、実はこの紫外発散、重力以外の力については回避策があるようで、それが「繰り込み」ということなんだそうだ。すごいな、繰り込み。