前世は魔女
元ルームメイトの村田恵美と会うのは約一ヶ月ぶりだった。
最近仕事が忙しくて、なかなか会えずにいた。
待ち合わせのカフェに早めに着いた難波零子は一人スマフォの画面をつまらなさそうに見ていた。
派手で人目を引く外見をしている。
身長は一七五センチと女性にしてはかなり高い。
スタイルも抜群だ。
出るところはでて、引っ込むところは引っ込んでいる。
金色の髪に白い肌が特徴的だ。
この外見はイギリス人だった祖母ゆずりのものだった。
零子の職業はいわゆるタレントであった。モデルや女優もこなすマルチな才能を持っていた。
ただ、その目立つ外見とは裏腹に彼女の性格は内向的なものだった。
友人も到着を待っている恵美ぐらいのものだった。
「ごめんごめん」
息をきらせながら、恵美が零子の目の前の椅子に座った。
丸顔の背の低い、可愛らしい感じの女性だった。
「いいよ」
零子はにこやかに答えた。
零子が仕事以外で笑顔を見せるのは恵美ぐらいのものだった。
カフェオレを注文した恵美としばらく近況報告をしあったあと、彼女たちは買い物にでかけた。
ある程度、買い物を楽しんだあと、恵美が行きたいというので占いにいくことになった。
零子自身は占いはあまり好きではない。
もし占いなんてものがあたるなら、私は子供のときにあんな目にはあわなかった。
未来なんてものは誰にも分からないものなのだ。
それが彼女の持論であった。
でも唯一の友人の頼みなので無下にはできない。
また信じなくても話しを楽しむくらいの余裕はあってもいいのかな。
と零子は思った。
とあるショッピングセンターの一角にある占いコーナーに彼女たちは訪れた。
小さなテーブルには複雑な魔法陣が描かれた布が置かれていた。
そのむこうに派手なメイクをした女性が座っていた。
ゲームにでてきそうなローブを身にまとっていた。
二人はその占い師の向かいに座った。
占い師は恵美の手をとり、低い声で聞いたこともない言語の呪文を唱えた。
「見えたわ……」
と言った。
「あなたの前世は幕末の花魁ね。とても人気があったみたいね。すごく美人でとあるお金持ちの商家に見受けの話しがもちあがってたようね。でもかわいそうにその直前で病気で死んでしまったようね。あなたはその時、不幸だったからかしら現世ではきっと幸せになるわよ」
ふうっと息をはきながら、占い師は言った。
美人と言われて恵美は気分をよくしていた。
事実、彼女は半年前に結婚していて、それなりに幸せであった。
ちらりと占い師は零子の方を見た。
「あなた、面白い相をしているわね。特別に見てあげるわ」
そう言うと占い師はかなり強引に零子の手をとり、またあの聞いたこともない呪文を唱えだした。
もう勝手に。
零子は少し、イライラしていた。
「見えたわ。やはりあなた面白いわね。どうやらあなたの前世が過去や今にも影響してるみたいね。あなたの前世は中世ヨーロッパの魔女よ。それも本物のね。幾柱もの悪魔と契約したかなり強力な魔女だったようね。でも不幸にも魔女の嫌疑をかけられた村娘を救うために逆に異端審問官に捕まってしまって、火炙りになって殺されたようね。その前世で獲得した魔力のせいであなたは子供のときから不思議なことに遭遇してきたようね」
じっと占い師は零子のアーモンド型のおおきな瞳を見ながら、言った。
これは魔除けよと言い、店を去るときに占い師は青い小さな水晶のついたペンダントをプレゼントした。
どうせ、たいした価値はないだろうと思いながら、零子はそれを受け取った。
この代金も占いの料金にふくまれてるのだろう。
でもデザインはかわいくて、ちょっと気に入った。