表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/471

4冊目 『不死鳥の飼いかた全集』 その32

「ま、とりあえずはさっさと契約して、『不死鳥の飼いかた全集』を封印しちゃいましょう。そのあとは『テンポラルのドッペルゲンガー研究』の番よ」


 里音の言葉に、花子があっと声をあげました。


「そっか、まだ『テンポラルのドッペルゲンガー研究』も残ってるんじゃないの! どうするの? もしかしてまた里音ちゃんか花音ちゃんのドッペルゲンガーを出して、それで封印するつもり?」

「残念ながらそれは無理よ。だって最初に生み出したドッペルゲンガーは、もう消滅しちゃったから。だからこれ以上わたしたちのドッペルゲンガーを何体作ろうとも、『テンポラルのドッペルゲンガー研究』の封印には協力してくれないわ」

「どうして? だってあの成りかわろうとしていたニセモノは、もうやっつけたじゃんか。それならもう一回ドッペルゲンガーを出したら、うまくいくんじゃ」

「それがダメなのよ。一度ドッペルゲンガーが消滅した人は、それ以降ドッペルゲンガーを作っても、みんな本人に成りかわろうとしちゃうのよ。いったん魔界図書館でリセットしないと、つまり封印しない限りはわたしたちのドッペルゲンガーは作れないわ」


 あごが外れたかと思うほどに、花子があんぐりと口を開けて里音を見ました。ですが、すぐに口をパクパクさせて、里音を責めたてます。


「ちょっとちょっと、じゃあどうするのよ! だって『テンポラルのドッペルゲンガー研究』は、同じ動きをして止めないといけないんでしょ、里音ちゃんたちが『魔界カメレオンの冒険』でどっちかに変化しても、さっきみたいにうまくいかない可能性があるじゃんか! これじゃあ封印できないんじゃ」

「落ち着きなさいって。それについてはちゃんと当てがあるわ。実をいうと美緒に魔界図書館の図書カードを作って、『不死鳥の飼いかた全集』を貸してあげるのも、ホントは美緒に頼みがあるからよ」


 目を丸くする花子は無視して、里音は美緒に向きなおりました。


「なあに、頼みって? いっとくけど、ほっぺさわるのは絶対やめないからね」

「いや、それは今すぐにでもやめてほしいんだけど……って、そうじゃないわよ。あのね、あんたに『テンポラルのドッペルゲンガー研究』を開いてほしいのよ」

「えっ、どういうこと?」


 里音は『テンポラルのドッペルゲンガー研究』の封印方法を、美緒に簡単に説明しました。その危険性ももちろん説明しましたが、美緒は実に簡単にOKしたのでした。俊介と花子が思わず口をはさみます。


「ちょっと待ってよ、ダメだよそんなの! 美緒ちゃんが『テンポラルのドッペルゲンガー研究』を開いて、ドッペルゲンガーを創るなんて、そんなの危険すぎるよ!」

「そうよ、そんな危険な仕事は、それこそ里音ちゃんのドレイであるパンツ聖人にさせればいいじゃんか!」

「お前っ、誰がドレイだ! それにぼくはパンツ聖人じゃないって、何度いったらわかるんだよ! そうだ、ぼくじゃなくて花子のドッペルゲンガーを創ったらいいよ。花子だったら最悪成りかわられても、今よりひどいことにはならないだろうし」

「あんたわたしをなんだと思ってんのよ!」

「お前がケンカふっかけてきたからだろ、それに危ない目にあいそうになるとすぐ逃げるくせに、この卑怯者め!」

「パンツばっかり狙うパンツ聖人の変態にはいわれたくないわ!」

「なんだと、こいつ!」

「あんたこそなによ!」

「はいはい、ストップ! そこまでにして。もちろんわたしだって、あんたたちのどっちかを犠牲……じゃなかった、ドッペルゲンガーを創ろうって思ったわ」


 あっけらかんという里音を、俊介と花子はジト目で見つめました。


「今里音ちゃん、思いっきり犠牲っていったよね……」

「絶対いったわ。この人完全にわたしたちを、都合のいいドレイくらいにしか考えてないわ」

「とにかく! あんたたちじゃドッペルゲンガーを創ることはできないわ。俊介は聖人の血に守られているから、『テンポラルのドッペルゲンガー研究』が聞かない可能性がある。それに下手すりゃ、聖人の血を持ったドッペルゲンガーが現れるかもしれないでしょ。そうなったらお手上げだわ」

「んでもって花子は、俊介が借りてる魔界図書館の本によって生み出されているわ。これもやっぱり聖人の血に守られる可能性があるし、それになにより、ゆうれいやドッペルゲンガーみたいな、命がないもののドッペルゲンガーを作ることは不可能なのよ。どうしてか原理を説明すると、ソウルエンゲージフローレスでライトフルネスとシャドウクリアリングスルーアウトエフェクトにプロテクテッドウィズカウンタライズ……」

「待って待って! だまって! 説明はもういいから口を閉ざして!」


 花音が謎の説明を始めだしたので、里音たちはみんなであわてて口をふさぎました。花音はむぅっとほおをふくらませて、里音をにらみつけました。


「もうっ、どうしていっつもあたしの説明を邪魔するのよ?」

「また今度じっくり説明聞いてあげるから、とりあえず今日はやめておいて。で、結局ゆうれいのドッペルゲンガーを作ることはできないのよ。だからあとは美緒しか封印できる人間がいないってわけ。わかったかしら?」


 そういわれてしまえば、俊介も花子も反論することはできませんでした。しかし当の美緒は全くおそれていない様子です。というよりもかなり乗り気なようで、ウキウキしながら準備運動しています。


「ほら、美緒もノリノリなんだし、いいでしょ。ま、その代わり万が一あんたが失敗したときは、わたしたちも全力でサポートするから、しっかりがんばりなさい。とりあえず図書カードはそのあと作ればいいわ」

「美緒ちゃん、ホントにいいの?」


 心配そうな俊介に、美緒はビッとブイサインしてうなずきました。


「大丈夫よ。里音ちゃんたちもサポートしてくれるんだし。それにわたしにしかできないなら、わたしががんばらないとでしょ」

「だけど……」

「そんな不安そうな顔しないでよ。大丈夫ったら。さ、始めましょう」


 里音は美緒にうなずいて、美緒に向かって『テンポラルのドッペルゲンガー研究』を開きました。美緒のからだを青い光が照らします。照らされた美緒の影から、真っ黒いすがたの美緒が現れました。ドッペルゲンガー・美緒です。


「それじゃあ始めてちょうだい。二人一緒に『テンポラルのドッペルゲンガー研究』を閉じるのよ」


 美緒とドッペルゲンガー・美緒は同時に首をたてにふりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ