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5冊目 『テンポラルのドッペルゲンガー研究』 その10

「ようこそ、ゲームブック『魔界戦士ネームレスのゲームブック』の世界へ! 今回のステージは、エクストラステージである『コロシアム』だ。このステージは、お友達とデュエルを楽しめる、いわばお試し用のステージだから、気楽に参加してくれ。それじゃあプレイヤーのドッペルゲンガー・花音くん。六面さいころを二つふって、ステータスを決めてくれ」


 ゲームのアナウンスなのでしょうか、どこからともなく説明が聞こえてきました。ドッペルゲンガー・花音はけげんな顔をして、空に向かってたずねました。


「お姉ちゃんはふらないの? 六面さいころ」

「いい質問だ。里音くんはすでに一度このゲームブックを体験しているから、そのときのデータを使用するようだ。もちろん里音くんも君と同じように、()()()()をふってステータスを決めているから、安心してくれたまえ」


 アナウンスにいわれて、ドッペルゲンガー・花音がにやりとしました。


「お姉ちゃんきいた? どうせお姉ちゃんのことだから、強かったデータを使おうとでも思ってるんだろうけど、同じさいころふるならあたしの勝ちだわ。あたしのさいころ運がとっても高いの、お姉ちゃんだって知ってるでしょ」


 勝ち誇るドッペルゲンガー・花音を、里音も余裕の表情で見ています。よほど自信があるのでしょうか。ドッペルゲンガー・花音はふんっと鼻を鳴らしました。


「いいわ、その顔を絶対泣き顔に変えてやるんだから。で、まずはどのステータスを決めるの?」

「いい質問だ。まずはヒットポイントを決めてもらおうか。ちなみにステータスの説明は必要かな?」

「別にいらないわ。そんな複雑じゃないでしょう。じゃあヒットポイントからね。それっ!」


 ドッペルゲンガー・花音はさいころを二つ、すごい勢いでぶん投げました。ゆがんだ空間をさいころがとんでもないスピードで転がっていきます。里音があきれ顔でドッペルゲンガー・花音に注意しました。


「あのねぇ、いくらステージを読みこんでる途中だからって、そんなめちゃくちゃしないでよ。出た目が確認できないじゃない」


 里音の言葉通り、さいころが見えなくなるまで、アナウンスは沈黙したままでした。しかし、どうやらようやくさいころが止まったようです。再びアナウンスが聞こえてきました。


「目が確定した。ドッペルゲンガー・花音くんのヒットポイントは……12だ」

「ええっ!」


 里音が驚きのあまり飛びあがりました。ドッペルゲンガー・花音はキャハハと笑って飛びはねます。


「ほら、見たかしら? あたしのさいころ運がすごいってこと、改めてわかったでしょ。さ、どんどん行くわよ」


 ドッペルゲンガー・花音の目の前に、再び六面さいころが二つ現れました。そして――




「本当に、とんでもないさいころ運だわ。なんなのよ、このめちゃくちゃなステータスは……」


 里音は驚きを通り越して、あきれ顔でドッペルゲンガー・花音の頭上を見つめています。ドッペルゲンガー・花音の頭上には、ステータスバーが出現していました。


「ヒットポイント、マジックポイント、攻撃力に魔力が12……。防御力が9、魔法防御力が10って、どんなさいころ運よ」

「でも、全部12じゃなかったのね。なんだか守りがかなり弱いキャラになったんだけど、お姉ちゃんホントにイカサマしてないでしょうね?」

「守りが弱い? いやいや、めちゃくちゃじゃないの! 六つのステータスのうち、四つが上限値で、一番低い防御力ですら9だなんて。むしろあんたがイカサマしてないか心配になってきたわよ」


 ステータスバーとドッペルゲンガー・花音を交互に見て、里音がつぶやきました。ドッペルゲンガー・花音はキャハハと笑います。


「イカサマなんてできるはずないじゃん。それよりどうするの、お姉ちゃん。お姉ちゃんの自慢のステータスが、どのくらいか知らないけど、あたしのステータスに勝てるのかしら? 降参するなら今のうちだよ」

「ふんっ、ゲームブック素人のあんたが、ずいぶんと大きな口をたたくじゃないの。あたしの実力を見せてやるわ。さ、それじゃあステージに突入するわよ!」


 里音の言葉とともに、ゆがんでいた空間がどんどんとうずをまき、次の瞬間には運動場ほどの大きさの広場になっていました。それとともに、圧倒的な声援があちらこちらから聞こえてきます。


「へぇ、これがコロシアムね。ずいぶん楽しめそうなステージじゃん」


 まさにそこは、ローマのコロシアムそのものでした。四階建ての観客席には、びっしりと観客たちでうめつくされていて、みんな手をふって応援しています。真っ赤な旗がいくつも振られていて、そのどれもが、『エンペラーマジシャン・里音』と書かれています。


「なるほど、あたしにとっては完全アウェーってわけね。上等よ!」


 ドッペルゲンガー・花音はマジカルセイバーをにぎりしめ、里音に向かって突進しました。里音はふふんっと笑って魔術師の杖をかまえます。ドッペルゲンガー・花音がマジカルセイバーをふりあげたそのとき、そのからだがピタッと止まったのです。


「えっ、なに? まさか、まただるま神が転んだを?」

「まさか。最初にいったでしょ、これはゲームブック。進行はすべて、ページをめくって進んでいくのよ。たとえそれがエクストラステージであってもね」


 里音がいいおわらないうちに、ドッペルゲンガー・花音の目の前に、ステータスバーと同じようなウインドウが表示されました。


『ドッペルゲンガー・花音は里音に突進した。里音はにやにや笑っている。すきだらけだ。さて、どうやって攻撃しよう? マジカルセイバーの『サンダーストライク』なら8ページへ、マジカルセイバーの『ライトニングブースト』なら23ページへ』


「えっ、なにこれ? どうすればいいの?」

「そっか、あんたホントに初心者だったのね。わたしからは選択肢見えないけど、ウインドウにページ数がいくつか書かれてるでしょう? 選びたい選択肢のページ数をさけべばいいわ。そうすればゲームブックが進んでいくから」


 ドッペルゲンガー・花音が里音に目をやりました。里音の頭上にも、ステータスバーが出ていますが、数値はすべて『????』で隠されています。ドッペルゲンガー・花音は、チッと舌打ちしてからさけびました。


「いいわ、それじゃあ選ぶわよ! 23ページへ! 『ライトニングブースト』よ!」


いつもお読みくださいましてありがとうございます。

明日は2話投稿予定ですが所用でいつもと少し時間がずれますのでご了承ください。

だいたい15時台に1話、20時台にもう1話投稿予定です。

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