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4冊目 『不死鳥の飼いかた全集』 その20

「でも、あんまり気にしないでね。本当はこの子、すごく人見知りが激しいのよ。お父さんやお母さんにもなつかないし。わたしにはとってもなついてくれるんだけど」

「やっぱりそうか、忠誠心が高いってのは本当だったんだ」


 声に出してしまったあとに、俊介はあわてて口を手でおおいましたが遅すぎました。美緒がいぶかしげな顔で俊介を見ています。


「忠誠心? なにそれ、どういうこと?」

「あ、いや、あの……」


 言葉につまる俊介を見て、美緒の顔がみるみる険しくなります。なんとかしないとと思うのですが、うまい言い訳が出てきません。美緒が落ち着いた口調で、けれども迫力たっぷりにたずねました。


「さっきもそういえば、不死鳥とかいってたわね。額に変な模様があるとかもいってたし。いったいなんの話なの?」


 美緒の言葉と同時に、ピーちゃんがゲェーッと不気味な声で俊介をいかくしたのです。それとともに、ピーちゃんの羽がボッと燃え上がりました。


「ひぃっ!」


 思わず俊介が悲鳴をあげたので、美緒も驚きのあまり目を見開きました。


「俊介君、どうしたの? なにかあったの?」

「今、ピーちゃんの羽が燃えあがって」


 いい終わったあとに、またもや俊介は口を押さえました。美緒がはじかれたようにピーちゃんのほうにふりかえりますが、もちろんピーちゃんの羽はもとに戻っています。


「別になにもなってないじゃない。俊介君、もしかしてわたしのことからかってるの?」


 いつもより1オクターブ低い声で、美緒が俊介を問いただします。俊介は頭がもげるほどに激しく首を横にふりました。


「違う違う違う、絶対違うよ! 美緒ちゃんお願いだよ、信じて」

「でも、羽が燃えてなんていないし、いたって普通よ。さっきから本当におかしいわよ。ねぇ、いったいなにがあったのよ?」


 美緒に聞かれても、俊介は口をパクパクさせることしかできませんでした。美緒のうしろでピーちゃんが、炎に包まれた羽をばたつかせて、俊介をにらみつけていたからです。


 ――くそう、でも、うかつなことをいったら、きっとこいつ、ぼくのことも花子と同じように燃やそうとしてくるはずだ。なんとかしてごまかさないと――


 じっと考えこんでいたからか、俊介は美緒の視線が、氷よりも冷たくなっていることに全く気がつきませんでした。うまくごまかせないか頭をフル回転させる俊介に、美緒が静かに声をかけます。


「もういいわ。そうやって隠しごとをするってことは、全然反省してないってことだもんね。出て行ってちょうだい」

「えっ? 美緒ちゃん……?」


 驚く俊介でしたが、美緒は立ち上がって部屋のドアを開けました。絶対零度の視線で俊介を見おろします。


「ほら、出て行きなさいよ! わたしにそうやって隠しごとをして、里音ちゃんと仲良くやっておけばいいでしょ」

「そんなぁ、違うよ、美緒ちゃん、ただ、ぼくはその……美緒ちゃんをこれ以上まきこみたくないから、だから」

「それじゃあ里音ちゃんといっしょにいて、魔界の本を探していればいいじゃないの。どうしてわたしのところに来たの? 花子ちゃんもいなくなってるってことは、わたしにはもう関係ないんじゃないのかしら?」


 美緒ににらまれて、俊介はあたふたしながら必死に言い訳を探しました。ですがなにも見つかりませんでした。そしてついに俊介は……。


「違うんだよ、その、あの、ぼくは美緒ちゃんを守るために来たんだよ! あいつから、ピーちゃんから! ……その鳥は、不死鳥なんだ」


 美緒はぽかんとして、俊介の顔をのぞきこんでいました。ですが、やがておかしそうにアハハと笑いだしてしまったのです。


「もう、びっくりしたわ。真面目な顔して冗談いうんだもん。そんなわけないじゃない。ピーちゃんはセキセイインコのヒナなのよ」

「違うんだよ、美緒ちゃん。そいつはヒナの、セキセイインコのふりをしてるけど、それは本当は擬態しているだけなんだ。美緒ちゃんを幻術にかけているだけなんだよ!」


 なかばやけくそになって、俊介は美緒を説得しようとします。しかし俊介の決死の説明も、美緒には全く届きません。美緒はふうっと小さくため息をついて、持っていた『不死鳥の飼いかた全集』を開きました。


「ほら、この本にも載ってるじゃないの。ここのページのセキセイインコのヒナ、ピーちゃんにそっくりでしょ。俊介君ったら、いくらわたしでもそんな下手なうそにはだまされないわよ」


 サイドポニーをなでつけながら、美緒がほほえみました。しかし俊介は、美緒が開いた『不死鳥の飼いかた全集』に目がくぎづけになっています。


 ――どういうことだ? セキセイインコどころか、これ、完全に『太陽と月の不死鳥』のすがたじゃないか。『太陽と月の不死鳥』の飼いかたって書いてるし。どうして美緒ちゃん、セキセイインコだなんて――


 ハッとして、俊介は急いでピーちゃんをにらみつけました。ピーちゃんもゲェーッとあの不気味な鳴き声を上げて、俊介をいかくします。羽が燃えあがり、今にもおそいかかってきそうです。ううっと俊介はひるみましたが、すぐに美緒に向きなおりました。


「美緒ちゃん、あれ見てよ! あいつの羽、どう見ても燃えてるでしょう。あれが不死鳥だっていう証拠だよ。それにここ見てよ、ここ! 『太陽と月の不死鳥』って書いてるでしょう」


 俊介が『不死鳥の飼いかた全集』を指さしますが、美緒はあきれたように肩をすくめました。


「俊介君、まだそんなこというの? どうせ不死鳥って、魔界の鳥でしょ。『鳥の飼いかた全集』なのに、魔界の鳥の飼いかたなんて載ってるはずないじゃないの」


 美緒の言葉に目を丸くする俊介でしたが、ようやく『太陽と月の不死鳥』が幻術を使うことを思い出しました。


 ――そうだった、きっと美緒ちゃんは、あいつにまぼろしを見せられているんだ。だからあいつのすがたもセキセイインコに見えてるし、この本だって、『不死鳥の飼いかた全集』じゃなくて、ただの本、それこそ鳥の飼いかた全集かなにかに見えてるんだ――


「美緒ちゃん、違うんだよ、この本は魔界の――」


 ゲェーッとあの耳ざわりな鳴き声を上げて、ピーちゃんがバサバサっと羽ばたきました。美緒が急いでピーちゃんの鳥かごへとかけよります。


「ああ、ごめんねピーちゃん。驚かせちゃったわね。俊介君ったら、ひどいわよね、ピーちゃんのこと疑ったり、うそついたりして……」


 美緒に白い目で見られて、俊介は頭をかかえました。


 ――くそぅ、あいつ、ぼくが『不死鳥の飼いかた全集』を封印しようとしているのに気づいてるみたいだな。まずいよ、どうしよう。でも、無理やり取り上げようとしても、美緒ちゃんを傷つけちゃうし、あいつが暴走したらぼくも燃やされちゃうよ。けど、このままだと本当に美緒ちゃんが魔界の不死鳥の飼い主になっちゃう。ああ、どうしよう――


いつもお読みくださいましてありがとうございます。

明日からはまた毎日1話ずつの更新となります。

これからもどうぞ応援よろしくお願いいたします。

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