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4冊目 『不死鳥の飼いかた全集』 その12

「どの不死鳥が封印されてるかはわからないわ。というか、完全にランダムなのよ。なんだっけ、あんたたちの世界にもあるでしょ、そういうの、『ガチョーン』だったかしら?」

「えっと……『ガチャ』のことかな?」

「そうそれよ! ……コホンッ、そんなことはどうでもいいわ、とにかくどの不死鳥が封印されてるかわかったら、面白くないし、不人気な不死鳥なら本を借りに来る人もいなくなっちゃうでしょ。だから魔界図書館の『不死鳥の飼いかた全集』には、特殊な術をほどこしているのよ」

「特殊な術?」


 目を丸くする俊介に、里音は説明を続けます。


「そうよ。ようはどの不死鳥が出てくるか、完全にランダムにしているのよ。結構大変だったみたいよ、不死鳥ハンターに依頼して、魔界に住む全種類の不死鳥から羽をもらってきて、その羽を本に封印したんだから。でもそのおかげで、魔界図書館の『不死鳥の飼いかた全集』を開けば、魔界の不死鳥からランダムで一匹、ペットとして出現するようになったの。だから『不死鳥の飼いかた全集』はかなりのベストセラーになってるってわけよ」

「へー、確かにそれは面白そうだね。じゃあやっぱり、レアとかウルトラレアとか、そんなのもあるの?」

「希少価値のことかしら? もちろんあるわ。基本的には珍しさと、それと飼い主に対する忠誠心が高いかどうかで決まるのよ」


 里音の話によると、珍しくて忠誠心が高い不死鳥ほど、いわゆるレア度が高いということでした。俊介は首をかしげて里音にたずねました。


「ところで、忠誠心って?」

「要は飼い主を命がけで守ろうとするかどうかってことよ。忠誠心が低い不死鳥だったら、飼い主を置いてどこかへ行ったり、勝手な行動をとったりする。これはこれでけっこうやっかいだけど、問題は忠誠心が高い不死鳥ね」


 里音は首をすくめて俊介を見あげました。俊介は里音を見かえします。


「忠誠心が高いとまずいの?」

「そうね。だってわたしたちが今からしようとしていることは、『不死鳥の飼いかた全集』の封印よ。だから、少なからず飼い主に接触することになる。それを見たとき、不死鳥がどう思うか」

「まさか、ぼくたちが飼い主になにかしようとしているって」

「そうよ。それに不死鳥の中には、擬態能力の応用で、まわりに幻覚を見せることができるやつもいるのよ。だから飼い主がおとなしく『不死鳥の飼いかた全集』を渡してくれるとも限らないわ。誰だって自分の大事なペットを差し出せっていわれたら、そりゃあ怒るでしょ」


 俊介が目を見開きました。里音の顔から、美緒の家へと視線を移します。


「うん、きっと怒るよ。もし美緒ちゃんだったら、絶対に怒ると思う。美緒ちゃん、鳥とか動物も大好きだから。里音ちゃん、早く行こう! 美緒ちゃんが『不死鳥の飼いかた全集』を開く前に回収するんだ!」


 かけだそうとする俊介の耳を、里音と花音ががっちり捕まえました。引っぱられた耳が赤くなります。


「痛いっ! なにすんだよ、そんなことしてる場合じゃないだろ!」

「バカ、冷静になりなさいよ。もしもう美緒が『不死鳥の飼いかた全集』を開いてたらどうするつもりよ。それこそあんたがいうように、カンカンになって怒ると思うわ。怒るだけならいいけど、最悪不死鳥の炎でわたしたち全滅するわよ」

「とりあえずここは外で様子をうかがうしかないよ。お姉ちゃんがいうとおり、もし不死鳥が出てたらあたしたち相性最悪なんだから」


 二人に止められて、俊介はクッと息を飲みました。


「でも、それじゃあどうするんだよ?」

「今いったでしょ、まずは様子を見ないと……って、俊介、あんたのズボン、なんか変なのついてるわよ!」


 里音にいわれて、俊介は自分のジーパンのすそを見おろしました。思わずわっと声を上げます。


「なんだこれ、たぬき? なんでこんなところにたぬきが?」


 俊介の足に、小さなたぬきがしがみついていたのです。けり上げようとする俊介に、たぬきがかわいらしい声で怒鳴りました。


「ちょっと! あんたなんてことしようとすんのよ! こんなかわいい子だぬきをけろうとするなんて! 動物愛護団体に処刑されちゃえ!」

「えっ、わ、え、どういうこと? たぬきが、しゃべった?」

「ちょっと待って、このたぬき、どこかで見たことあるんだけど……」


 里音が首をひねります。考えこむ里音を、たぬきがじれったそうにののしります。


「物覚えが悪いわね、このチビ! あたしは花子のかばんについてた、たぬきのぬいぐるみよ。ぬいぐるみのポン子ちゃんよ。ちゃんと覚えときなさいよ、チビ!」


 里音の切れ長の目が、どんどんつりあがっていきました。八重歯をむき出しにして、今にもかみついてきそうな顔をするので、俊介は反射的にヒッと身をちぢめました。


「ずいぶん態度のでかいぬいぐるみね。このわたしを怒らせたらどうなるか、身をもって教えてあげるわ!」


 まるでけもののような瞬発力で、里音が俊介の足に飛びかかります。ポン子はひらりと里音をかわして、それから俊介のジーパンを登っていきます。里音のラリアットをもろに足に受けて、俊介はうげっと変な声を出してすわりこみました。


「いいわ、俊介、そのままじっとしてなさい、うぉりゃあっ!」


 俊介の肩に上ったポン子を、里音が思いっきりビンタしようとしますが、くるくるっと宙返りしてポン子がかわします。というわけで……。


「里音ちゃぶっ!」


 里音のビンタがそのまま俊介をおそったのです。ふっとばされる俊介を見て、花音がキャハハっとおなかを抱えて笑っています。ポン子はふわっと里音のうでに着地しました。ぞわっと里音のうでに鳥肌が立ちます。


「残念でした。さあ、こっからはあたしのターンよ! このままあんたのうでをよじ登って、そのかわいらしいお顔をひっかきまくってやるから、覚悟しなさいよ!」

「ヒッ!」


 里音がうでをブンブンふりまわしますが、ポン子はがっちりうでにしがみついて離れません。それどころか、じりじりとうでをよじ登ってくるのです。


「俊介、俊介!」


 里音にどなられ、俊介はのそのそと起きあがりました。


「いたひよほぉ……」


 情けない声を出して里音を見ます。ほおがはれ上がって、ろれつが回っていません。そんな俊介に、里音はようしゃなくどなりつけました。


「そんなぼさっとしてないで、さっさと図書カード出しなさい!」


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