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4冊目 『不死鳥の飼いかた全集』 その5

「えっ、影を? でも、花子の話じゃ、吸血鬼には影ができないんだろう。ほら、今だって二人とも、影が映ってないじゃないか」


 俊介が二人の足元を見ます。もちろん二人とも、影など全く映っていません。花音がチッチッチッと指をふりました。


「確かに影は映ってないけど、影がないってわけじゃないのよ。あたしたち吸血鬼は、影が他人には見えないってだけで、本当はあるの。とんでもなく薄いだけでね。まぁ、ずっと昔にある出来事があって、それのおかげでこんなに影が薄くなっちゃったんだけど」

「影が薄いとかいっても、二人ともとんでもなく濃いキャラしてるのに」

「なんかいった?」


 二人同時ににらみつけてきたので、俊介はブンブンブンッと激しく首を横にふりました。じろりとにらんだまま、花音が続けました。


「まったく、余計なこといわないでだまってなさいよ。で、話の続きだけど、とにかく吸血鬼にも影がある。そして不死鳥の炎はその影を燃やすことができるの。吸血鬼の影ってのは特殊なもので、それになにかされちゃうと、本体にもダメージが行くのよ。それも何十倍、何百倍にもなってね」

「だからこそ吸血鬼にとって、不死鳥は天敵なのよ。影を燃やされたら、わたしたちは一巻の終わりだわ。だからママはとんでもなく怒ったのよ。そんな天敵を飼いたいなんていったんだから、当たり前っちゃあ当たり前だけどね」


 はぁっと里音がため息をつきます。お預けをされた子供みたいな表情だったので、思わず俊介はなぐさめるようにいいました。


「そうだったんだ。それならぼくもわかるよ。鳥が好きなのに、飼えないのはさびしいもんね」

「まあ、そのあとなんだかんだいって、不死鳥の代わりにドラゴンの子供を飼うことになったけどね」


 花音がへへっと笑いました。俊介が口をぱっくり開けて花音を見ます。


「ドラゴンの子供? そんな、ドラゴンなんかもいるんだ。やっぱり魔界ってすごいところなんだね」


 感心したように俊介がいうので、里音も花音も満足げな顔でうなずきました。


「ま、それはいいわ。とにかく不死鳥は吸血鬼にとってとんでもなく危険なの。だからテンション下がってるのよ。そんな危険な本を封印しないといけないなんて」

「でもよくお姉ちゃんもそんな本を投げつけてきたわよね。下手したらあたし死んでたじゃない」


 花音がおどけて茶々を入れます。里音はあきれ顔で花音を見ました。


「死ぬ? あんたが? たとえ不死鳥の炎でも、あんたは絶対死なないと思うわ。まさに煮ても焼いても食えないって感じだし」

「お姉ちゃんどんだけおなか空いてるのよ? あたしなんて食べてもおいしくないだろうに」


 今度は花音がジト目で里音を見ます。里音はコホンッとせきばらいしてから話を続けました。


「どっちにしても、やっかいだろうがなんだろうが、封印しなくちゃオニババにひどい目にあわされるからね。やるしかないわ」


 ぎゅっとこぶしをにぎりしめる里音に、俊介はえんりょがちにたずねました。


「あのさぁ、その、やる気になってるところ悪いんだけど、今気づいたんだけどさ、封印するのは『不死鳥の飼いかた全集』であって、不死鳥じゃないんだよね」

「そりゃそうよ。不死鳥なんかまともに相手にしたら、絶対勝ち目がないわ」


 さらりという里音に、俊介は首をひねりながら続けました。


「じゃあさ、別にその『不死鳥の飼いかた全集』自体は危険じゃないんじゃない? まさかその本が不死鳥になるとか、そんなわけじゃないんでしょ。だったらそんなに怖がる必要ないんじゃないの」


 里音も花音も、あっけにとられて俊介を見ています。俊介は不思議そうに二人を交互に見ます。


「え、まさか、二人とも気づいてなかったの? 本自体は危険じゃないって」

「違うわよ。むしろあんたがとんちんかんなこというから、びっくりしただけよ。あ、待って、そうか、人間界じゃ飼いかた全集を買っても、別にそのペットがついてくるわけじゃないのね」


 納得したように里音がこっくりしました。今度は俊介がぼうぜんとする番でした。


「どういうことそれ? 魔界じゃその、『不死鳥の飼いかた全集』を買えば、まさか不死鳥がついてくるっていうの?」

「当たり前じゃん。だってそうしないと、例えばドラゴンとかだったらどこに保管しておくのよ?」

「いや、ペットショップとかあるんじゃ」

「ペットショップ? あのねぇ、魔界にはとんでもなくでかいドラゴンとかをペットにしてるやつもいるのよ。それこそこの町を一周するほど長いやつとかまでいるのに、どんだけ大きなペットショップが必要になるのよ」


 あきれはてたといわんばかりに、里音が肩をすくめました。俊介がムッとしていいかえします。


「だってしかたないじゃないか、ぼくは魔界のペットのことなんて知らないんだし。でも、ついてくるっていったって、どうついてくるのさ? 引換券でももらえるの?」

「バカね、引換券なんてあったら、結局ペットショップも作らないといけないじゃない。魔界だと飼いかた全集にペットを封印しておくのよ。で、それを開いた者がそのペットの飼い主になるわけ」


 里音が得意げに説明します。花音もうなずいてから口をはさみました。


「まぁ、ペットにする生き物によっては、開いたやつのほうがペットにされちゃったり、最悪エサにされることもあるけど。でも不死鳥は基本的にそんなことないわ。比較的小さい個体が多いし、それに飼いかた全集を開いたときに、最初に見た人を親と思うから、すぐになつくしね」

「そうか、じゃあ誰かが『不死鳥の飼いかた全集』を開いちゃったら」


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