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4冊目 『不死鳥の飼いかた全集』 その4

「とりあえずそれじゃあ、一番近くにありそうなやつを教えるね。一番近いのが、『不死鳥の飼いかた全集』よ」

「『不死鳥の飼いかた全集』ですって? よりにもよって不死鳥なんて……」

「ねえ、それってどんな本なの? もしかしてインコの飼いかたとかと同じで、不死鳥を飼育する方法が載ってるの?」


 俊介が興味深そうにたずねます。里音は目を丸くしました。


「意外ね、あんたが食いついてくるなんて。いつもは魔界図書館の本のことなんて、全然興味ないって顔してるくせに」

「別に興味ないわけじゃないよ。里音ちゃんが使った本で、面白そうなやつもいくつかあったし。それに、鳥とかの飼いかたが載ってる本はすごい好きなんだよ」

「でも、あんた鳥飼ってたりしないじゃない」


 里音に聞かれて、俊介は顔をくもらせました。いいにくそうにしていましたが、やがて答えました。


「母さんが、鳥はあんまり好きじゃないみたいで、飼うのを許してくれないんだ。でも、鳥の本を読むと実際に飼ってる気持ちになれるから、好きなんだよ」


 俊介の言葉に、里音たちもしんみりした顔でうつむきました。俊介があわてて、わざと明るい声で続けました。


「ごめんよ、変な話しちゃってさ。それより、どんな本なんだよ。そもそも不死鳥って魔界にもいるの?」

「ええ、魔界で一番人気のペットだわ。特に貴族は好んで飼っているのよ。なつけばとってもかわいいって評判だからね」

「じゃあもしかして、里音ちゃんたちも飼ってるの? いいなぁ、魔界の生き物で、初めて見てみたいって思ったよ。なんだか出てくる生き物が、全部恐ろしいっていうか、不気味な化け物ばかりだったからさ」


 おどける俊介でしたが、里音たちの顔はまだ暗いままです。俊介は首をかしげました。


「どうしたの、二人とも。なんだからしくないじゃんか。里音ちゃんなんか、いつもは率先して話に乗ってくるのに」

「あのねぇ、わたしたちだって、年がら年中ハイテンションってわけじゃないわよ。特に不死鳥が相手ってわかれば、吸血鬼ならだれでもテンション下がるわよ」

「どうして? え、吸血鬼って、不死鳥がきらいなの?」


 俊介にいわれて、里音と花音は首を横にふりました。少し間が開き、二人は顔を見合わせました。それからはぁっとため息をつきます。


「ホントにどうしちゃったのさ。二人とも、なんだか変だよ?」

「いや、初めてあんたと同じ気持ちになっちゃったからさ。わたしたちも鳥は好きなのよ。もっと小さかったころは、不死鳥を飼ってみたいってよく思っていたわ。ねえ、花音」

「うん。それであるとき、ママにお願いしにいったんだよね。二人で、不死鳥が飼いたいって。ちゃんと世話するからお願いって」

「でも、ママはものすごく怒って、二人とも針山地獄に正座させられちゃったわ」

「どんなママなんだよ、君たちのお母さんは……」


 俊介のあきれたようなつぶやきに、二人は声を合わせて答えました。


「オニババよ、あれは絶対!」

「オニババって……。で、どうしてそんなに怒ったのさ。あ、わかった。貴族のペットってことは、値段がとっても高かったからだろ?」

「いいえ、違うわ。というかあんた知らないかもしれないけど、吸血鬼一族も貴族なのよ。魔界では非常に古い一族だから、わたしたちはかなりのお金持ちなのよ。だからいくら値段が高くても、別に買えないほどじゃないわよ」


 ふふんっと得意そうに里音がいいます。俊介はイラっとしたのか、ぼそりとつぶやきました。


「身長もお金で買えたらよかったのにね」


 里音が魔界図書館の本を出そうとするので、俊介はあわててあやまり倒しました。花音も里音をはがいじめにして止めます。


「放して、花音! あのバカドレイをぶんなぐってやるんだから!」

「お姉ちゃん落ち着いてよ、とりあえずぶんなぐるのはいいけど、本を使うのはやりすぎだよ」


 里音ははぁはぁと荒い息を整えてから、はきすてるようにいいました。


「あとで覚えておきなさいよ、美緒にあんたのダメなとこ、全部ばらしてやるから。あんたが美緒のストーカー写真持ってることもチクってやるから」

「ストーカー写真ってなにそれ? え、あいつそんなのも持ってるわけ?」


 花音が心底軽蔑したように俊介を見おろしました。俊介は必死になって誤解を解こうとします。


「違う違う、そりゃあ写真持ってるけど、あれは五年生のときの自然教室の写真だよ! 別に盗撮したとかそんなんじゃないからね!」


 しかし花音は全く聞いていませんでした。俊介から距離を取り、里音にいいました。


「お姉ちゃん、魔界図書館の本使っていいわ、その変態のぞきストーカーを本でこらしめてあげて!」

「やめてよ! だから違うっていってるのに!」


 俊介の言葉を、里音も花音も完全に疑っています。白い目で見られて、俊介はうなだれてしまいました。


「うう……違うのに……」

「とりあえずあんたの処遇はあとで決めるとして、話を元に戻すわよ。ママが怒った理由、それは、不死鳥が吸血鬼にとってまさに天敵だからなのよ」


 里音の言葉に、俊介は顔をあげました。驚きに目を大きく開いています。


「天敵? え、そんなのいるの? あ、でもそっか、人間のお話でも吸血鬼にはニンニクやら十字架やら、いろいろ効果があるものが載ってたし、魔界の吸血鬼も弱点くらいはあるよね」


「ニンニクに十字架? そんなの効くわけないじゃないの。ニンニクなんておいしいだけだし。まあいいわ、ともかく不死鳥は吸血鬼の天敵なの。なぜかというと、不死鳥の炎は、わたしたち吸血鬼の影を燃やすことができる、魔界でも数少ない炎だからよ」


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